鬼灯の冷徹
□君色
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ある日、私は地獄から誘拐されました。
白澤さんに誘拐されました。
理由は分かりませんが、無理矢理薬を飲まされて、誘拐されたんです。
数日経った辺りから、私に血を飲ませ始めました。
「私は…誰でしょう…嗚呼、眠りたい…深い深い眠りに…」
ごく稀に、私はふと目覚めることもありましたが、基本的に毎日気だるく…眠い…
稀に目覚めて初めに気付くこと…それは、口内に広がっている鉄のにおい。
自分で無意識に噛んでしまったらしい、そう決めつけていた。
「ここは…?」
自分の居場所が分からなくなっていた。
自分が誰かも分からない。
味覚もない。
「私は…死ぬ…?」
私の肌は不自然なまでに白く、髪や産毛など全てが真っ白になって、淡雪のようだ。
しかし、着物は漆黒。私は…?
「ホオズキ」
痛い…痛い…痛い…!
私は、ワタシは、わたしは…あぁぁああぁぁぁあ゛ぁあ゛あ゛っ!
「ご主人様…」
「おはよう、今日も天気がいいよ?」
「そうですか」
「魘されてたよ?」
「そうですか」
「ホオズキ?」
「ねぇ…白澤さん…」
「!?」
「私は…地獄の閻魔大王の第一補佐官…鬼灯ですね?」
「記憶、戻ったの…」
「不完全ですが…大体は分かりました…」
「そっか…」
「しっかりなさい!はっきりしない方は一番嫌いですよ!?」
「…!」
「待ってます…」
早く来てください、我が主…白澤様…
彼の額と脇腹には黒い瞳があり、彼の背中には三本の角が――――――…