鬼灯の冷徹
□その彼女♂、モデルにつき
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とある日の昼下がり、いつものように町の一角の漢方薬局で白澤という青年は、ぐうたらに暇をもて余していた。
「はぁーぁ…暇だなぁ…」
そんな言葉を呟く白澤に弟子である桃太郎は、
「いやいや!仕事してくださいよ!」
「えぇー…」
「ったく…あ、そういえばあんたの愛しの加ヶ知さんの雑誌、今日販売じゃないッスか?」
「あっ!そうだね、買いに行ってくる!」
「世話が焼ける上司だな…」
桃太郎はそうボヤいて漢方作りに励んだ。
白澤は店の近くにある路地裏が何よりの近道で、人が少ないため、割と好んで使っていた。
そんなとき、路地裏を抜けた先にある表通りから騒がしい声が聞こえてきた。
「ん…?なんだろ?」
きゃぁぁぁぁあっ!!
加ヶ知様ーっ!!
「え、加ヶ知様…?」
急いで表通りに出てみると、先頭にイケメンとその後ろには数多の女性がそのイケメンを追っていた。
白澤は驚いたが、何かの縁かとも思い、近くに来た加ヶ知の腕を引っ張り、路地裏へと避難させた。
えぇー…どこ行っちゃったのぉ…
残念そうな女性たちの声が遠ざかるまで、白澤は加ヶ知の口を手で塞いでいた。
「ん…んーっ…!」
「あ、ごめんね!」
苦しそうに声を上げたので急いで離すと、一息吐き出した。
「いえ、お助け頂きありがとうございます。お礼をしたいのですが…生憎今は時間がありませんので、貴方が空いてる時にでも連絡を入れてください」
それでは、と言って薄く微笑むと加ヶ知は走り去っていった。
白澤はその場に座り込んだ。
「めっちゃカッコいい…しかも、これ個人のアドレスっ…」
白澤はつい有頂天になっていた。