鬼灯の冷徹

□そんな鈍感な君が好き!
2ページ/3ページ

コンコン…

「ん…?」

その日の真夜中、店仕舞いをした後に客が来た。急ぎの用事だったのだろうか、営業時間帯が分からなかったのか…原因はさておき、出ることにした。

「はいはーい!」

ガラガラ…

店の扉を開けると、そこに立っていたのはしかめっ面をしたあいつだった。明らかに具合が悪そうだ…

「げほっ…風邪薬…寄越しなさいっ……!」
「ちょ、ちょっ…とりあえず、そこの椅子に座ってろ!すぐに調合してやるからっ…!」

前も風邪で度々来ることはあったが、今回は疲労も相まって辛そうだった。

「はぁ…」
「椅子だと辛いか…な?こっち来て…ベッドに横になってろよ。」
「……すいません、失礼します…」

ベッドに横にして、再び調合をしに戻った。十分程して、やっとこさ作り上げると鬼灯が横になっているベッドへと運んでいく。

「ほおー…ず、き…」

ベッドからは規則正しい寝息が聞こえてきた。
顔は風邪を引いているせいか赤い色をしているが、しかめっ面はいくらか緩んでいる。
すっ、と無意識に鬼灯の漆黒でクセの無い髪を撫でた。


そして、無自覚と言われたことの理由が分かり、自覚へと変わっていった。
あぁ、僕は鬼灯が好きなんだ。


朝になり、鬼灯はゆっくりと起き上がった。

「昨晩はご迷惑お掛けしました。」
「いや、いいんだよっ!またおいで!!」
「?まぁ、薬は取りに来ますが…」

そして僕の好きの感情はどんどん膨れ上がっていった。

「鬼灯っ!ちゃんと寝てないだろ!」
「この酒、すごく美味いんだけど…度数が高かったからお前にやるよ!あ、本当に美味いんだからな!」
「仙桃持って帰る?良質なのが獲れたんだ!」
「お前疲れてるんだろ!目元のクマ酷いし、肌も荒れてる!」


「はぁぁー…」

鬼灯は盛大なため息を吐いていた。

「鬼灯様、どうかなさったの?」
「おや…お香さん。はぁ…聞いてくれますか?このため息の理由…」
「えぇ、もちろんよ?私でよければね?」

そして鬼灯がお香に吐露したのは、白澤のストーカーか何か変な趣味か分からないが、やたら自分の体調や肌の具合、骨が浮いてきただの変態染みたことを言ってくるという内容だった。

「鬼灯様、落ち着いて聞いてくださいね?」
「はい。」
「きっとそれは…白澤様が鬼灯様のことを好きだからじゃないかしら?女の勘よ?」
「そ、れは…あり得ないでしょう?だって、私とあの極楽蜻蛉は犬猿の仲ですから。」

その会話を密かに聞いていた白澤は桃太郎に怪訝な目をされている中で、一言言い放った。





「そんな鈍感な君が好き!!」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ