嘘×恋

□嘘×恋「事件」
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事件(1/23)


僕の名前は、
高橋陸人。
24歳。

友達からは、
【陸ちゃん】
と呼ばれていて、
身長は174cm。60kg。
目が悪くて、
メガネをかけている。

女性にも恵まれ、
何不自由ない生活を送っている。
と言いたいところだが…
生まれて、
24年間彼女が出来たことがない。
いや、
女の子とまともに喋ったことすらないのである。
事件(2/23)


お昼はカラオケ屋でアルバイト。
夜は、家でマンガやアニメ観賞。
ネットでの顔が見えない相手とのやり取り…。


休みの日には、
メイド喫茶に行き、
目当ての子に、
癒されていた。


そんな平凡な毎日に、
事件は起こったのである。事件(3/23)


雲行きが怪しい、
平日の午後。

僕は、
いつものように、
お気に入りのリュックを背負って、
秋葉原へと向かった。
事件(4/23)


キーーーー!!!!ドンッッ!!!!!


交通事故だ。
女の子が引かれる現場を、
目の当たりにしてしまった僕は、
その場所から立ち去るのは、
罪悪感があり…
野次馬の1人となった。

「大丈夫ですか!?今、救急車が来ますので!」

通行人が、
携帯で救急車を呼んでいる。


オートバイでの事故…
引いた本人は、
そのまま逃げたみたいだ。事件(5/23)


そっと…
顔を覗いてみる。

可愛い…


というか…

かのんちゃんじゃないか!

行きつけのメイド喫茶で働いてるお目当ての子である。

僕のアイドルが…

僕のかのんちゃんが…

混乱した。
事件(6/23)


「かのんちゃん!!」

僕は思わず叫んでしまった。

「今、動かさないで下さい!」

見知らぬ人に怒鳴られる。

僕は別に触ってはいないぞ。


「あっ…すいません…」

一応、
謝ることにした。

心配で、
群集から飛び出した。
顔に傷はついてないが、
ピクリとも動かない。
事件(7/23)


ピーポーピーポーピーポー


担架を下ろし、
こっちの方へ向かってくる。

意識がないのも分かり、
病院に運ぼうとしていた。


「僕、彼女の知り合いなんですが、同乗しても大丈夫ですか!?」

「はい!では、こちらの方から乗って下さい」


救急隊員の人からの了解を得たので、
勢いで同乗してしまった。事件(8/23)


僕らの関係は、
メイドとお客様。
知り合い度だと、
犯罪クラスだ…。

かのんちゃんの無事を確認したら、逃げようと思っていた。


そのぐらい…
良いよね?


ふと目線を、
頭から足先へずらした。
事件(9/23)


ポケットの中から、
携帯が飛び出している。
かのんちゃん、
別に中身を見るわけじゃないし、
取り出しても良いよね?

落ちて無くしたら、
困るもんね?

自分に言い聞かせた。
事件(10/23)


開く…

やっぱり中身が気になる…

そんなことはしちゃダメだって思ったが…

開いてしまった。


気になるのはメールだ。


人によって、
振り分け登録されていた。事件(11/23)



家族

女友達

男友達…




拓ちゃん
事件(12/23)



拓ちゃん?!
誰だ!?
ハート…
彼氏か。

彼氏なんかいないって、
言ってたのに…

嘘つかれていたのか…

拓ちゃん…か…
事件(13/23)



事故直前まで、
メールしていたのか…


早く拓ちゃんに逢いたいよかっ。
大好きだよかっ。
仕事行きたくな〜いかっ。


僕にとって、
見たくなかった現実だった。
本名は麻衣ちゃんか…

もう体の心配なんて…
していなかった。
事件(14/23)


ボーっとしていると、
いつの間にか、
病院に着いた。


「では、すいません!バック等持って、外に出て下さい!」


救急隊員の人に急がされたので、
麻衣さんの携帯を自分のポケットに入れてしまった。事件(15/23)


数時間が経ち、
財布の中身を調べて、
身分証から、
御両親への連絡を、
看護婦さんがしていた。

意識がないらしい…。

親に逢うのは、
気まずいので、
待合室で3時間くらい、
ゲームをしていた。
事件(16/23)


「なんで…なんでうちの子がこんな目に合うのよ…」

40半ばの女性が泣いている。

「泣くなって。命があっただけでも良かったじゃないか!これから先、少しずつ、麻衣の記憶を戻せるように頑張っていこう。俺らがしっかりしなきゃ、ダメだろう!」

ん?

麻衣?

男性…
この2人は、
両親か。


記憶??
事件(17/23)


「だって…麻衣が可哀想すぎて………わかったわ。しっかりするわ」

母親らしき人が、
ハンカチで涙を拭いている。


何の話だ。
かのんは、麻衣。
その麻衣ちゃんが…
記憶喪失??!!


両親が病室に戻ってくる前に、会いに向かった。



すごくドキドキする…
事件(18/23)


トントントン

ドアを叩いた。

「はい。どうぞ!」

ドアを開けると、
看護婦さんと目があった。

「あのっ、すいません…。入っても大丈夫ですか?」


「はい。頭を強くぶつけたみたいで、今記憶の方がないので、辛いとは思いますが、責めないであげて下さい」


「…分かりました」

僕は、
かのんちゃん…
いや、
麻衣ちゃんの側へ向かった。
事件(19/23)


「…大丈夫?」

「あの、すいません…どなたですか?何も思い出せなくて。さっきの人達がお父さんお母さんって言われても…何も…何も分からなくて…本当にすいません」

かのんちゃんの声だ。

やっぱり可愛い…
天使のようだ。

いつもは、
頭に猫耳をつけたり、
結んだりしてるが、
サラサラな髪…

憧れの好きが、
こんなに近くに。
事件(20/23)



僕は、
この子が欲しいと思った。
何で僕が彼氏じゃないんだ。

拓ちゃんって誰だよ。

嫌だ。嫌だ…。

あんなにお店では、
笑顔をくれたのに。
手が届く距離だったのに…。


大好きだったのに…
事件(21/23)


「……」

僕は言葉が出なかった。

「あの…?」

かのんちゃんが、
子猫のような目で見つめてくる。


涙が出てきた。


「僕は…」


トントンッ
ガラガラ…


「麻衣、ジュース買ってきたわよ!お父さんは、一旦仕事に戻ったわ。あら……どなた?」


母親だ。
事件(22/23)



混乱した…

どうしようどうしよう。

友達?

男の友達なんて、
成立するのか?

お店の客?

そんなこと言えない……


どうしよう。
事件(23/23)



「…申し遅れました!このような形での挨拶となってすいません!僕は、麻衣さんとお付き合いをさせて頂いている高橋拓といいます!待ち合わせ場所に行く時に、こういう事態になってしまって…僕がもっと早く行ってれば…僕が誘わなければ…本当にすいません!!」



土下座をした。

麻衣ちゃんの前で、
麻衣ちゃんのお母さんの前で…

高橋陸人ではなく、
拓ちゃんとして…

真剣に謝った。
続きは、また次回書きます。コメントをよろしくお願いします。

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