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□ハツコイ-初めて、君に恋をした-(1)
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初めての恋、初めての片思い、それから、それから。
恋のプロセスは沢山存在する中で、でも色恋沙汰なんて自分とは一生無縁なもの、だと思っていた。

『聖川は好きな人とかいねぇの?』
『えっ…』

修学旅行では、誰もが一度は経験するであろう”暴露大会”
夜な夜な先生の見回りを掻い潜っては、男子も女子も誰が好きだの何だのと、布団が敷き詰められた部屋で密かに盛り上がる。

小学生の頃の聖川真斗も、それは例外ではなかった。

『だってお前、絶対そうゆう話しねぇんだもん!でもいるんだろ?教えろよ!』

隣の布団にいたクラスメイトの一人から振られた話題に、真斗は困惑した。今までクラスの女子をそんな風に思ったことがなかったからだ。

『……いないよ…そんなの…』

これが正直な本音だ。だが、一人前に色めき立った生意気なクラスメイト達は、そんな言い逃れは許さないと言うように真斗を問い詰める。

『言えよ真斗ーお前だけ秘密なんてずりぃよ!みんな言ったのにさ!』
『そうだよ、一人くらいいるだろ?可愛いなぁとか思う女子!』

ずるいと言われても、勝手に話し始めたくせに何て理不尽な言い分だ。しかも、可愛いなと思う女子、と言われて一瞬頭に浮かんだのは、ついこの間生まれたばかりの妹、真衣だった。

だが、こんなところでそんな発言をしたら馬鹿にされてしまう、そう思った真斗の口から出たのは

『……本当にいないんだよ…ごめん…』

謝罪の言葉だった。散々ひっぱるような物言いになってしまった挙げ句、話の腰を折るような真似をしてしまったと、真斗は自分を責めた。

すっかり萎らしくなってしまった真斗に問い詰めていたクラスメイト達も罪悪感を感じ、程なくして真斗にこの手の話を振るのはご法度、という暗黙のルールが出来た。

それからと言うもの真斗自身も、俗にいう”恋愛トーク”を出来るだけ避けるようになった。

みんなの話題に乗れるならと、好きな女子、とやらを見付けようとそれなりに努力した時期もあったが、努力の甲斐も虚しく好きだと思う女子は見付からず。かと言って、こんな悩みを打ち明けられる友人もいなく。

結局、もう深く考えるのはよそう、と自分の中で結論付けたことによって、思春期独特の色恋沙汰とは一切ノータッチのまま、真斗は早乙女学園に入学することのなったのだった。


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