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□シャワー嫌い
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ザーーーーッ

「温度は確かこんくらいだったな。

…めいり?」

「あの…、パウリーさん。」

ザーーーーッ

「なんだ?」

「その音…止めてください。」

「お…おぅ。」

キュッ…ポツッ…ポツッ…


風呂場の目の前に、私は座り込んだ。

水の音を聞いたとたん、身体中が鳥肌たつ。

昨日の出来事がフラッシュバックする。


高潮


想像も出来ない

その、圧倒的な力に二回も呑まれている私にとって

水の音は、恐怖でしかなくなっていた


「めいり…。大丈夫か?」

パウリーが私の異変に気付いて、近づく。

「私がここに来る前ときた時、波にのまれたって言いましたよね。」

「…そうだな。」

「…水、怖くなってます。」


ポツッ…


俯いた私は、手足が震えていることにも気づいた。

ははっ…

前の世界だと、泳ぐの、スッゴい楽しかったのに。

今じゃ、シャワーにも恐れているなんて。

「…めいり。」

「…はい。」

顔を上げたとたん、パウリーに抱き締められた。

今までよりも、強いけど優しい抱擁。

子供でもあやすかのように、パウリーは私に言った。


「…怖かったんだな。」

「…はい。」

「俺も、昔アクアラグナに襲われたことあったんだ。」

「…そうなんですか。」

「あぁ、そん時の恐怖は今でも忘れられねェ。」

「…でも、パウリーさんは水、怖くなさそうですね。」

「俺は、この町や景色が好きだからな。」

「…景色?」

「おう、スッゲェ綺麗なんだぜ!

W7の日の出と夕方。」

「…それで…パウリーさんは…」

「俺がアクアラグナに襲われた日に父親に連れてって貰ったんだ。

秘密の場所な?

明日になって悪いが、一番最初にそこ、連れてってやるよ。」

「いっ…いいんですか?」

「ったりめぇだろ!

…絶対、水嫌いなくなっから安心しろ。」

パウリーさんに言われて、私は…少し安心した。

パウリーさんなら、きっと、私の水嫌いを克復してくれそうだから。
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