NOVEL

□暴走少女
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これは後に、二度と同じ事が起きないようにと。

新撰組局長 近藤勇直々に、ある人物への“ある禁止令”が下ることになる要因となった事件(?)である…。














☆★☆★☆★☆







平隊士は既に寝静まったある日の深夜。
飲み会の席で、それは起こった。




「……、おい…千鶴に誰か酒飲ませたのか?」

「ぃゃ…千鶴ちゃんのお茶に、ほんのちょっと酒を混ぜただけなんだが…」

「ちょっとだぁ?…どこがだよ、千鶴の意識とんでるじゃねぇか!!」


幹部達がいるのは、広間の一角。
先程から怒りを露わにしているのは土方。
そして申し訳なさそうに、床に倒れ伏した千鶴を見下ろしているのが永倉。

そして…






「千鶴寝ちまったの?」

「子供に酒なんか飲ますからだぜ、新八」

「…とはいえ、このまま此処で寝かせるわけにも行くまい。風邪を引く」

「なら僕が連れてくよ。」



平助、原田、斎藤が酒を煽りながらほろ酔い状態で千鶴を見やる。
そして沖田が何やら上機嫌で立ち上がり千鶴の方へ歩み寄ってきた。


「……待て総司。お前、千鶴をどこに連れて行く気だ?」

「何です、土方さん。部屋に決まってるでしょう?」


しかし何かを察知したのか、土方は沖田の肩をグッと掴んでそれを止めた。
沖田は飄々とした笑みを浮かべながら、首を傾げて言う。


「なら聞くが、…いったい誰の部屋に連れて行く気だ?」


誰の、の部分を強調して土方がジト目で言えば、沖田は目をパチクリと数回瞬いた。


「僕のですけど?」

「やっぱりかてめぇ!!
…ーーてか、当然の様に何馬鹿なこと言ってやがる!!」


そのまま沖田の頭を一発殴ろうとした土方の手を、沖田は軽い動作でヒョィッと避ける。


「やだなぁ土方さん、女の子の部屋に男が入るわけにはいかないじゃないですか?」

「普段から千鶴の部屋に、昼夜関係なくズカズカ入って行きやがる人間の台詞じゃねぇだろうが!!!」


土方のツッコミに「確かに」と、他の幹部隊士も頷く。

…が、酒も入っているせいだろうか。
いつの間にやら原田達との酒盛りに戻っている永倉を筆頭に、皆面白がって真面に沖田を止めるつもりが無いらしい。






そして…。

あーでもない、こーでもない。
と、沖田と土方の言い争い(の様なもの)が続くことわずか一刻。


沖田と土方の真中当たりで寝そべっていた千鶴が、突如ムクリと起き上がった。


それに気づいた面々の視線が、一気に千鶴へと集まる。





それが、忘れられない一夜へのキッカケになるとも知らずに。












「千鶴、大丈夫か??」

沖田との言い争い(?)を中断して、ボーッとしている千鶴の前に膝をついた土方が千鶴の顔を覗き込んだ時、トロンとした瞳の千鶴と視線があった。







「千鶴?気持ち悪くねぇか?…待ってろ、今水…ーーぉお?!!」

何も言わない千鶴を心配して、水を取りに行くため立ち上がろうとした土方の腕を、突然何かが引っ張った。






そのまま床に仰向けに倒れた土方の上に、跨る…何か。

突然の事で受け身の取れなかった土方が、息苦しそうに軽く眉間に皺を寄せながら、その人物を見た。





「……そこで何してやがる、千鶴」


言外に俺の上から降りろと促す土方ではあるが、千鶴はユラユラと身体を前後左右に揺らしながら、土方を見下ろし微笑んだ。





「……何故れすか?」

艶っぽい笑みを浮かべて、千鶴が土方の頬を撫でてそのまま唇に触れた。

「夜はこれからじゃないれすか…」

「…ーーー!!?」

それに顔を僅かに赤くして目を丸くする土方を余所に、千鶴は土方の服にスッと手をかけた。


周りで騒いでいた幹部達も静まり返り、ゴクリと喉を鳴らす。





「はいそこまで」


土方を助けたのか、後を考えて千鶴を助けたのか、はたまた嫉妬したのか…

とりあえず。
危うく18禁に進みかけていた千鶴を止めたのは、2人のすぐ近くにいた沖田だった。


「…んー」

不満げに唇を尖らせる千鶴をチラリと見やり、とりあえず助かったと安堵する土方。
…彼とて女に免疫が無いわけではないが、まさか千鶴に押し倒されるとは思っていなかったのだろう。




「だ…っ大丈夫か?!土方さん」

ドタドタと土方に歩み寄ってきたのは平助だ。

「大丈夫に決まってんだろ」

「…の、わりには…。目元が赤い様にも見えるんだがな」

そしてその後ろから、楽しげに笑いながら原田がやってくる。
そんな原田をジロリと睨み、土方は舌打ちをした。


「んな事より、千鶴をどうにかしねぇと、また何かやらかす可能性が…「もう遅い様です、副長。」


土方の一歩後ろに立った斎藤の言葉に促される様に、土方は視線を移し、そして目を見開いた。










「沖田しゃん…」

「何、僕を誘ってるの?」


土方の視線の先には、沖田の首に腕を回している千鶴と、その千鶴の腰にしっかりと手を回している沖田の姿があった。





「なぁ、ありゃ流石にまずいんじゃないか?」

「まずいなんてもんじゃ無ぇだろうな…、あのまま放っておいたら濡れ場行きまちがいなしだ、見学してるわけにはいかないだろ」

永倉の呟くような問いに頷いたのは原田だ。永倉に沖田を止めるよう目配せをすると、自分は千鶴の後方へと回り千鶴を沖田から無理矢理引き剥がした。





「あぶねぇあぶねぇ…」

「残念、もう少しだったのに」


沖田を引き剥がす事に成功した永倉が深々と安堵の息を漏らせば、逆に沖田は心底残念そうにため息をついた。
そしてその沖田を呆れたように斎藤が見やる。


「酔った娘相手に何をする気だアンタは…」

「酔ってようが何だろうが…、千鶴ちゃんからのお誘いを断るわけにはいかないじゃない?」

「馬鹿を言うな、…第一俺たちがそれを許すわけが無かろう。」

「…へぇ?」


バチバチと火花を散らす沖田と斎藤。
沖田を抑えている永倉が居心地悪そうに、平助と土方に視線を移せば、平助はショックだったのだろうか。

完全に石化していた。

そして土方はと言えば、ジタバタと暴れている千鶴を後ろから抱くようにして抑えている原田の方へと、縄を片手に近づいて行っている所であった。

…部屋に戻したら平隊士の部屋に乱入しかねないと判断し、どうやら縄で縛り付ける事にしたらしい。






…と、その時。



「ん…ぁ……っ」



突如千鶴の口から漏れた、甘い喘ぐような声音。


土方の歩みは止まり

沖田と斎藤の睨み合いも止まり

沖田から手を離し、平助の頬を叩いていた永倉の動きも止まった。





そして、全員の視線が原田と千鶴に集まる。






「…千鶴?」


…恐らく、というか。
確実に一番驚いたのは原田であろう。


後ろから抱き締めているとはいえ、それ以外特に何もしていない筈なのに、いきなり自分と密着している千鶴が甘い声を漏らしたのだから。


「原、田…しゃ……ぁっ
そ…なに、強く…しな、ぃ…れ……っ」

「…は?!」


横っ面を思い切り殴られたような衝撃だった。
後に原田はそう語る。





「左之!!アンタまで何をしている!!!」

「ゃ、待て!!俺はナニも…じゃなかった。何もしてねぇよ!!」


斎藤の叱責と思わぬ千鶴の声音に慌てる原田。
その拍子に緩んだ原田の腕から、スルリと抜け出た千鶴に気が付いたのは、永倉に頬を叩かれて漸く石化から意識を取り戻した平助だった。


「ち…千鶴!広間から出るのは駄目だ!!」

「…!」


広間の襖に手をかけていた千鶴の手を取り、間に合ったと安堵する平助ではあるが、自分がその後どうなるかまでは考えていなかったらしい。


「…ーーぅわぁ?!」


他の幹部同様、あっさり千鶴に押し倒された。


「ねぇ平しゅけ君…、暑く無い?」

艶やかに笑みながら、千鶴は平助の上に跨りそのまま服に手をかけた。
そして平助の胸元を躊躇なく露わにさせる。

「ゎ…わぁぁああーーー?!!」

平助の悲鳴が裏返り、顔は一気に湯でタコのように瞬く間に赤く染まった。
そしてどんどん先に進もうとする千鶴に戸惑い、助けを乞うように一番近くにいた斎藤へと視線を向けた。


「…は、ー君っっ!!」


その表情と助けを乞う声は、宛ら怯える子犬のよう。

「…!」

小動物が好きなのだろうか。
斎藤は千鶴を救うと言うよりは、平助を救うために2人の間に割って入った。

千鶴を平助から引き離し、その隙に呆然としている平助を原田と永倉が引っ張り起こす。

斎藤は平助の無事を確認すると、改めて千鶴に向き直った。


「いい加減にしろ、千鶴。…酔っているとはいえ、これ以上はあんた自身後々後悔するぞ」

斎藤相手にも何かをやらかすかと思いきや、意外にも大人しく斎藤の叱責を受ける千鶴。
他の幹部達が「漸く落ち着いたか…?」と、不安げに見守る中。





千鶴の頭がカクンと下に下がった。





「…………」


まさか。

そう思いながら、斎藤が千鶴の顔を覗き込み、そして深々とため息をついた。


「…一君、千鶴ちゃんもしかして……」

「あぁ、寝ている」

沖田の問いに斎藤が頷くと、その斎藤の隣まで歩いてきた土方が「漸く終わったか…」と、千鶴が本当に寝ているのだと確認して安堵した。









こうして深夜の騒動は幕を閉じたのだが、翌朝。

二日酔いに苛まれているは、幸か不幸か…酒入りのお茶を飲んでからの記憶は全く無かった。


けれど、翌朝話を聞いたのだろう。
困ったように苦笑する近藤と、頭を抱えてため息をついていた土方からは禁酒を命じられ…

永倉からは深々と何かの謝罪をされ…

沖田には「続き、楽しみにしてるからね」と、意味深な笑みと言葉を向けられて…

原田からは「あーいう声は、俺だけに聞かせてくれよ?」と、何故か色っぽい視線と声音でよく分からないことを言われ…

平助は千鶴を見ただけで顔を真っ赤に染めて逃げ去った。


「………」


そしてそれを一緒に呆然と眺めていた斎藤からは「…気にするな」と、肩をポンと軽く叩かれた。




「……な、何があったの…?」




1人混乱する千鶴ではあるが、その疑問に答えてくれるものは、誰一人としていなかった。








END











ちょっと前に書き上げたは良いものの、何度読み返しても流れが気に入らずアップしていなかった物体です(^_^;)

一から修正するか、とも思いましたが…(´∀`)…。
どうにも面倒で( `・ω・′)←


何かキャラ達の言動もしっくりこないし、千鶴も何か
ただのいやらしい子になってるし(´・ω・`)
私の中での千鶴は、本当は清純派美少女なんだもの!!!!!!爆



………クレームはしてやらないであげてください((((;゚Д゚))))←

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