NOVEL

□沖田夫妻と斎藤さん
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「………断る」

『電話越しでの第一声がそれってさ、一君ちょっと酷くない?』

「先のメールの内容上、必要性を感じないのだから当然だろう。第一に、あれが人に物を頼む態度には思えん」

『あはは、仕方ないじゃない。
僕の可愛い千鶴のためだもん』








遡ることほんの数分前。

ようやく纏め終わった企画書類の最終確認をする為に、一時間程残業して帰宅しようとしていた斎藤の携帯に、総司からメールが届いた。



そのメールの送り主である総司は現在、3日間の短期出張中の2日目の夜を迎えているであろうことをぼんやりと思い出しながら、メールフォルダを開いて内容を確認した、……の…だが…。








【こんばんは、仕事お疲れ様★
一君どうせ週末暇でしょ?やっぱり千鶴一人じゃ心配だから、僕の代わりに今晩家に泊まってくれないかな??
……勿論、少しでも変な事したら一君相手でも容赦しないけど♪】



確認したメールは、こんな内容だった。




「千鶴を一人にするのが心配なのは分かるが、総司達のマンションは普通の住居よりかなり防犯性に優れているだろう。
…それに、明日にはあんた自身が帰宅するのが分かっていて、あえて罠にハマるつもりは無い」


そこまでキッパリと言い放ち、斎藤は通話を切ろうとする。
だが、それも次の総司の言葉により動きが止まった。







『…実をいうとさ、千鶴…今日体調崩してるらしいんだよね。』

「………何?」

『昨日朝家を出る時ね、千鶴咳してたんだけど、薬飲んで寝てれば治るってきかないし僕も出張行かないわけにもいかないから病院無理やり連れてくこともできなかったしで…。
昨日夜のうちに電話した時は普通だったんだけどね、今朝と昼間とさっき電話した時凄く体調悪そうだったんだ、息も荒いし』


そこまでの説明を総司が終えた瞬間、一週間にも満たない数日の出張で一日に何度電話をしているのかと思わずツッコミたくなるのを斎藤はどうにか堪える。


「手を出す出さないを心配しているのであれば、千鶴の兄である薫に頼ん「誰それ僕知らない」


血縁者なら無駄な嫉妬などしなくても済むだろうと提案しようとしたのだが、それもバッサリと総司に切り捨てられる。
余程薫と仲が悪いらしい。

「はぁ…」

そして小さなため息をつくと、斎藤は仕方なさそうに口を開いた。

了承の意を伝えるために。








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