NOVEL
□狼さんに気をつけて!
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「何、弟ではなく妹であったか!?」
問題は、この時…
近藤 勇が帰宅してから発覚した。
「あらあら、てっきり双子の兄弟かと思っていたものね。………どうしましょう?」
「うーむ…まいったな」
困ったように顔を見合わせる近藤夫妻に、薫と千鶴は何事かと首を傾げた時だった。
「実はだな、男の兄弟だと思っていたから…寮を男子寮しか確保できていないのだよ。」
見落としていたらしい、と…
申し訳なさそうに言った近藤を眺めながら、薫と千鶴は一瞬我が耳を疑った。
自分達は今、何か聞き間違えたのだろうか、と。
「……ぇ…?」
ポカンとして言葉を失う千鶴を横目に、薫が「それなら今から手続きし直せばいいのではー…」と問えば
「いや、実は女子寮は生徒が定員ギリギリなものでな…。明日入寮とあっては今更変更ができん。君達に我が校への編入を進めたのは、男子寮に2人分までは空きがあったからなのだ」
と、あっさり返された。
難しい顔をしながらも茶を啜り、近藤は「どうしたものか…」と唸る。
「……あの…。私、卒業できるんですか…?」
男子生徒として編入して、実は女の子だったので卒業できません!
なんて事になっては困ると、ようやく気を取り直した千鶴が困惑しながらも近藤に問えば、近藤は「それは大丈夫だ」と、即答した。
「生徒手帳や、書類はちゃんと女子生徒に戻しておく。だから、卒業まで男子生徒の服を着ていたとしても特に問題は無い。ただー…」
ーー年若い娘を、男と同室にさせるというのは如何なものか…。
近藤は、一番の問題はそこなのだと言って頭を悩ませた。
「二人一部屋ですよね?なら、別に僕と千鶴が同室なら問題無いのでは?」
書類上の問題が無いと分かった薫が安堵して近藤を見やれば、隣りに座っていた奥さんが頬に手を当ててため息を付く。
「んー、あの子達…仲が悪いのでしょう?」
「うむ…、薫君と千鶴君が2人同室ならば1番良いのだが…、何しろ総司と風間君は犬猿の仲故に部屋を分けた位だからなぁ…。」
ーーまた"あんな事"になってはかなわん。
近藤は、深々とため息をついた。
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