NOVEL

□りとるぼーい
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「…ねぇ、千鶴ちゃん。」

「千鶴先生でしょ、総司君?…分からない所あったの?」

「ん、それは平気。…それよりさ、君って彼氏いるの?」


カリカリと鉛筆で問題を解きながら、僕は出会ってまず一度目の質問をした。

…年齢差はあれど、前世でも今世でも…僕は彼女を手放す気は毛頭無かったから。



そして肝心の千鶴ちゃんはと言うと…。



「…っ!!!」



顔を真っ赤にして固まっていた。
しかも何も食べてなかったはずなのに、何かを喉に詰まらせたかのように、むせて盛大に咳をしている。

僕は「大丈夫?千鶴ちゃん」と、椅子の上に立ち、隣で咳き込む彼女の背を撫でる。



「千鶴…先生で、…っハァ…ハァ」


言い直し、息を整えながら
千鶴ちゃんは涙目で僕を見つめていた。

多分、彼女は叱るために睨んでるつもりなんだろうけどね。

まだ7歳で身長が千鶴ちゃんよりかなり低い僕だけど、それでも彼女自体元々身長は高くないから、椅子に登れば自然と僕が彼女を見下ろす形になるから、どう見ても上目遣いで見つめられているようにしか見えない。



「で、いるの?いないの?」

「知りません!」

「知らないなんてことないでしょ?君のことなんだから。…それに、分からないことがあったら何でも聞いてねって言ったのは君だよね。千鶴せーんせ?」


出された問題を解き終わり、僕は千鶴ちゃんにプリントを渡す。

予想以上にプリントの返却が早かったことに驚きつつも、千鶴ちゃんは黙り込んで困り顔で眉根を寄せた。




あんなふうに言われたら、真面目で礼儀正しい千鶴ちゃんは、話を流したり無視したりできない事を僕は知っている。


確実に質問の返答を聞けるのが分かっているから、僕は凄く今上機嫌で満面な笑みを浮かべていた。









「ぃ、いません。…私モテないし」

「へぇ…?そんな事ないと思うけどなぁ」



問題の採点をしながらも、顔を真っ赤にしてる千鶴ちゃんは、やっぱり可愛い。
モテないとか言ってるけど、それは絶対ありえない。

彼女は女の子の中でもかなり可愛い部類だし、前世だって彼女に好意を抱いていた幹部だって少なからずいたのを僕は知っている。
…彼女は物凄く色事に疎いから、周りからのアプローチに気付いてないんだろう。



「(…僕は前世で身を持って知ってるしね)」


自嘲君にそうボンヤリ考えていると、千鶴ちゃんが最後の問題の採点を終えたのか、赤ペンにキャップをはめて言った。


「…それに、私…理想が高いらしくて…」



千鶴ちゃんがボソリと呟くように言ったその言葉だけど、僕はしっかりと聞き取っていた。


…彼女に再会してから、子供のふりとか丸ごと忘れて、素で話しているのはこのさい無視しておく。





「理想が高いって?」

どういうこと?
っと、そうたずねれば、千鶴は火照る頬を押さえながら逡巡した後に言った。




「私…、どんな男の人を見ても、全然ドキドキしないの。…例えば、カッコ良くて優しい…女の子から凄く好かれそうな男の人を見てもね、…。

違う、私が好きなのはこの人じゃない。って…そう思ってしまうの」



ーー分不相応だよね。


そう言って、ため息をつく千鶴ちゃんに、僕は眼を見開いた。






けど、それと同時に押さえきれない喜びが笑みとして溢れてくる。






彼女の魂は、僕のことを覚えているんだ。



…そう、確証できたから。















「千鶴ちゃんは、運命の人が誰なのか…ちゃんと分かってるみたいで安心した」


椅子の上に膝立ちになり、隣に腰掛けている彼女の肩に右手をポンッとおく。

そして千鶴ちゃんが不思議そうに顔をあげた瞬間、僕は彼女の唇をソッと塞いだ。





勿論自分の唇で。












「…っ?!!」

「今でも大好きだよ、千鶴ちゃん。…僕が大人になるまで待っててね」



彼女が、今日最大で真っ赤になって、口をパクパクさせているけど、知らないふりをする。

だって決めたから。


年齢差なんか、気にしないって。





「そ…総司、く…っ」

「結婚式は11年後の…僕の誕生日で良いよね?」





そして僕は、彼女に反論させないように



更に深く、彼女の唇を塞いだ。








END










★★★★★★★


アップする気が無かった物をアップしてみました(´∀`)←

誰か目線で書いてる方が文章作りやすいなぁと再確認w


子供っぽく見えなかったのは、スルーしてくださいσ(^_^;)



2013.3.25 椿拝
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