Lost Colors

□無くした一つ目の色
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その日は入学式だった。
俺は両親がなくなって高校生になるまで叔父のところで世話になっていたが俺の勝手な理由で今年から一人暮らしをはじめた。
ここは以前、両親が生きていたときに住んでいた場所だった。
俺にとっては生まれ故郷となる。
幼いときのあのころの俺は友達も多くいて、毎日楽しかった。
そうだ・・・・と思う。
でも、俺は本当にそうだったのかよく分からない。
俺は昔からこんな人でなしだったのかもしれない。
入学式で昔同じ学校だった同級生の三和と偶然会った。
向こうもまさか俺に会えるとは思っていなかったらしく、俺を見つけた瞬間、お前櫂か?と驚きながら話しかけてきた。
「俺だよ、俺!!三和タイシ!!」
昔と変わらず、人懐っこい笑みを浮かべて俺にまた出会えた事を本当に嬉しく感じている様子だった。
「・・・ああ、覚えてる」
俺は特に再会できて嬉しかったとか、そんな感情は浮かんでこなかった。正直めんどくさいと思った。
それさえもすぐになにも思わなくなった。
そんなことを考えている俺には気づかず、三和は先ほどの俺の発言に対して何か適当なことを合わせて話していた。
「そういえばさあ、お前ヴァンガードやってたよな?」
「ヴァンガードだと?」
俺はそこで三和の言葉を遮った。
三和は俺の反応にぎょっと体を震わせた。意識しないうちに低い脅すような声音で俺は話していたようだが、そんなの関係ない。俺は言葉を続けた。
「そんな子供染みたカードゲームなんかとっくの昔に止めた」
俺はそうばっさり言い捨てて、桜散る並木道をかつて友人として接していた人物をそこに置き去りにして、その場を去った。
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