HUNTER×HUNTER夢

□拝啓7・8
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拝啓お父様



お元気ですか?

優しいお父様がお母様に振り回されていないかとても心配です。

・・・・他は特にありません。





「サリーさん、手紙書いてるの?」

「えぇ、ゴンくんも?」

「うん、俺はミトおばさんとおばあちゃんに出すんだ」

そういうゴンくんの手には綺麗な色の封筒が握られている

「ミトおばさん?」

「うん、俺を育ててくれたんだ母さんみたいな人かな

俺両親いないから」

不味いことを聞いちゃったかしら?

「ミトさんのことが好きなのね」

「うん!ミトおばさんは口うるさいし怒ると怖いけどすっごく優しいんだ!」

自慢げに語るゴンくんからは強がりなんてものは微塵も感じない

本当にミトさんという女性が母親のように好きなのね

「サリーさんは誰に出すの?」

「父に、なのだけどね・・・書くことがなさすぎて出さなくてもいいかな、って」

本当に特に書くことがなくて困ったわ

剣士のような人がいればこういう剣を見たわ、なんて話を書けるのだけど

父の頭の中は『俺はリナの夫という名の保護者だ!』くらいだもの

私のこともきちんと保護しろよ保護者よ

と何度思ったことか

「サリーさんのお父さんってどんな人?」

「・・・。」

聞かれると困るわ

朗らかというか気が抜けてるというか

母はなんていってたかしら・・・

「あ、くらげみたいな頭のひとよ!」

金色のくらげなんてみたことないけど

たぶんふわふわしてるところを言ってたんだ、と思う

思いたい

決して脳がくらげみたいに透明とかそういう意味ではない。はず。です。

「くらげ・・・?」

ゴンくんが首をかしげる

私もこの例えはどうかと思うけど仕方ないの

本当によくわからない父なの

「そんなことより、ゴンくん」

「うん?」

「4次試験では本当にありがとう」

ゴンくんがプレートをくれなかったら私は今頃イルミに殺されるのが確定して

逃亡劇が始まってただろうから

「そんな、俺は拾ったからあげただけで・・・お礼を言われることなんて」

ゴンくんの笑顔に影が差す

プレートをくれた時から変だとは思ってたけど

「いいえ、私にはとても大事な1点だったの。他にもいろんな人に助けられたのよ。」

「?」

「私プレートなくしたから全部1点のものでたまったから、6人の人に助けられたのよ。

ハンター試験が終わったらみんなにお礼したいと思ってるの

だからゴンくんも、なにか私にできることがあったら言ってね」

ゴンくんを見下ろすと茶色い瞳からあふれた滴が頬を伝っておちる

あまりにも自然に

綺麗に流れ落ちたからそれが涙と気づくのに時間がかかった

「え・・・え!?」

今の私の台詞のどこに泣く要素が!?

なんとか泣き止ませないとこんなところレオリオさんたちに見られたら何言われるかわかったもんじゃないので

とりあえず抱きしめてみた

「えっぐ・・・ひっく」

まだ12才、本当なら学校行ってお勉強してる年齢だものね

試験会場につくのだって大変だったはずだし

この最終試験まで残ったんだから

体力がどんなにあっても疲れた心の部分はそう簡単には癒えない

「今だけ私のことミトさんって思っていいからね」

ゴンくんの一番大事な家族の名前を言えば

両手が私の背中にすがりつく

彼が泣き止むまで抱擁をつづけた








「ありがと・・・」

泣き止んだゴンくんが体を離す

「もう大丈夫?」

「うん、急に泣いてごめんなさい」

「謝らなくていいのよ。苦しい時は泣いたほうが楽になるんだから」

「ん、じゃあごめんなさいじゃなくて、ありがとう」

剛毛をぽふぽふ撫でてみる

「へへ、サリーさんっていい匂いがするね」

ほわっと微笑むゴンくん

か、かわいすぎる

「俺もいろんな人にお礼できるよう頑張ってみるね」

茶色い瞳にはもうすっかり涙はなくなり

かわりに強い決意が宿っていた



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