ハンター夢 短編

□好きと伝えたりしてみる
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リビングのソファでくつろいでいると
いつの間にか帰ってきていたイルミがテーブルで何かしらの書類に目を通していた
手元にあるのとは別のものに手を伸ばしたとき長い黒髪が肩から落ちる

『イルミの髪って綺麗よね』

出迎えの言葉より先に口から出て

しまった、と思った
彼は仕事の準備を邪魔されるのを嫌う

『そう?』

めずらしく怒らないのをいいことに寝そべったまま手を伸ばして手触りの良い黒に触れる

『ええ、ストレートでおろしてるの素敵よ』

『そうやって素面で褒めれるのってすごいね』

『褒めてないわよ。素直にそう思っただけ』

出会った時から彼の黒い髪にはいつも目を引かれる

『・・・。』

無言が怖くて視線を顔に移せば
いつも血色のよくない顔が少し赤い

『照れてるの?』

『別に』

そっぽを向く仕草に銀髪のあの子を思い出して少し懐かしくなる

『ふふ 可愛い』

『は?』

意味がわからないって表情で私を見下ろす
いつもの無表情じゃない彼を見るのはなんというか嬉しい

体を起こし髪から頭の方へ手を移す

『可愛いわ イルミ』

『・・・っからかってんの?』

少し口調がキツくなってるけど
顔がさっきよりも赤いから気にしない

『いいえ、可愛くて、愛しいわ』

彼にしか抱けない想いを伝えれば
一度目を逸らした彼は深くため息を吐いた
と思ったらソファに押し倒された
いくら高級なベッドでも突然そんな風にされるとちょっと痛かった

『俺も、お前が愛しいと思うよ・・・たぶん』

強気に出たかと思ったら弱気が出てきて本当にめずらしいこと尽くしだわ

『そこはたぶんをつけちゃダメでしょ』

『仕方ないだろ、恋愛なんてしたことないんだから』

むすっと見下ろすその顔も可愛いと思ってしまうなんて変よね
だって目の前の彼は暗殺一家の長男様なのに

『あとこのくらいしてほしいわ』

『は?』

片腕で少し体をうかせてもう片方で彼の後頭部を軽く寄せて
唇を押し当ててすぐに離す

『?』

片腕の力を抜いて彼を見上げられる位置に戻る
口をパクパクさせて、顔色も相まって金魚みたいね

停止して動かない彼を置いて図書室へ足を向けながら
拒否されないってことは脈ありってことと思っていいのかしら?
と少し嬉しくなるのと同時に
逆セクハラで訴えるよ
と言われないことを祈ることにした



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