ハンター夢出会い〜試験前編

□異世界旅行三日目
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三日目




「心配です・・・」

朝からどんよりとした雲行き

それと同調したかのようなクリスの表情

昨日ご飯の後からずっとこの調子だわ

どう励ませばいいのかこまっちゃうのだけど

「ごめんなさいね・・・」

「いいえ、でもこれだけは約束してください!」

「なあに?」

「ヒソカさんと一緒の部屋で寝ちゃだめですよ?

できるなら移動の時も食事の時もどんなときでも半径5m以内に近づいちゃダメです。」

「は、はぁ・・・」

「もう、なんであの人の依頼受けたんですか?バカ!」

ぽかぽか殴ってくる仕草も可愛いわねぇ

でも結構痛いからやめてほしい

「おはよ、朝から元気だね★」

あら噂をすれば

「ひ!」

「どうしたの?そんなに怯えて・・・よしよし」

ヒソカさんが現れた瞬間

クリスの手が私の服をぎゅっと握りしめて

昨日の盗賊の時以上に脅えているのがわかったのだけど

2人の間に何があって

この子がこんなに怯えるのか

気になるわ

「サリーさんは何も感じないんですか?」

「?」

なにをかしら?

あ、もしかしてクリスって視える人なの?

おばけてきなものは私も遠慮したいのだけど

「うぅ〜〜〜心配ですぅ」

「大丈夫よ、ちょっと試験受けて帰ってくるだけだもの。」

「試験もですけど道中もですよ!」

「そう?私が胸が高鳴ってるわよ。どんな盗賊がいるのか楽しみで仕方ないの。」

そしてこっちの世界のお宝がどんなものがあるのか・・・あ!

「そういえばクリスにプレゼントがあるのよ。」

腰に下げていた麻袋にしまったものを思い出す

「これ、カンザシっていうジャポンの髪留めらしいわ。」

食べ歩きした時に買ったのだけど

昨日はごたごたして渡しそびれてたのよね

「わあ・・・綺麗・・・」

小さい両手に乗せると

「いいんですか?」

「えぇ、きっと貴女に似合うと思うもの。」

「ありがとうございます!」

ふんわり微笑むその頭をなでなでする

「それじゃあ行ってくるわね。」

「はい・・・絶対帰ってきてくださいね。」

手を振るクリスに手を振って

私はヒソカさんとイルミさんの3人で宿を出た











「試験ってどこであるの?」

宿を出て街を歩く

屋台に目移りしながら聞くと

「なーいしょ★」

とヒソカさんが意地悪く笑うの

無意味な内緒話って好きじゃないのよね

「イルミさん、知ってる?」

「無視されちゃった◆」

「うん、俺があの宿に泊まったのはそれを聞くためだから

じゃなきゃあんな設備の悪いとこ泊まらないよ。普通。」

「え、あのくらいが普通でしょ。」

「え?」

イルミさんと見つめ合う

なんだか深い溝ができたわ・・・

「そういえば、昨日のアレって何度も使えるのかい?」

「昨日の?ファイアーボールのこと?」

「壊れた宿を修復したことだよ★」

「いいえ、あれは特別な条件の時だけよ。」

「ふぅん◇」

「ほら、教えてあげたんだから試験のある場所教えてよ。」

ヒソカさんがパチクリしたあとニタっと笑う

怖いわね

なにあの笑顔

純粋さが塵一つもない邪気だけの笑顔って魔族でもできないと思うのだけど

「ザハン市だったかザパン市だったと思うよ☆」

「どのあたりかしら」

地図とコンパスを取り出す

「おや、準備がいいね☆」

「えぇ、旅をしてる途中だったもの」

というか世界に戻れない迷子なのよね〜

どうやってあちらに戻るか

はやく方法を見つけなくっちゃね

私たちがいた街がルインだったかしら?

そこからザパン市までは・・・

あら、海を渡らないといけないのね

「ね、この文字なんて読むの?」

さきほど溝ができた彼が

歩調を緩めて私が書きこんだ文字を指さす

「あ、これはエゾノー村って読むのよ。」

この村に行かなければ私もここに来ることにはならなかったのに

あ、でも来なかったらクリスの料理食べられなかったのよね?

盗賊狩りも再開できたし

う〜ん、プラマイゼロくらいにはなるかしら

「へえ。こんなとこに村があったんだね。」

「えぇ、私も驚い・・・あ!!」

「どうしたんだい?」

「忘れ物とか言わないでよ。」

「忘れてたものが・・・」

恐る恐る袋のうちの一つ

おばあちゃんにもらった食料が入っていたそれをあける

「パン?」

「まだ食べるの?やめときなよ。」

2人の言葉を無視してかじりついてみる

変ね

変だわ・・・

私があの村でこのパンをもらったのは二日前

防腐剤を使っていないだろう手作りパンだものカビが生えてるかもって思ったのに

何も変わってない

むしろ美味しいまま

「スペクタクルズ」

解析の魔術をかける

別になにかしらの魔術がかかってるわけでもないようね

「どうしたんだい?」

「そのパンが変なの?」

2人が不思議そうにしてるけど

「いいえ、なんでもないわ。ちょっと不思議だっただけ。」

「・・・腐ってるならやめときなよ。」

「お腹壊したらシャレにならないよ☆」

「違うわよ!!」

確かに食べることは大好きよ

でも腐ってるものを食べるほど食い意地はってないんだから

まったく失礼な2人ね












怒って1人で歩き出すサリーの後ろを少し離れて歩く

「彼女面白いだろ☆」

「そだね」

パンに念をかける人間なんて初めてみたよ

俺は食べ物に執着しないほうだから

意味がわからないけど

うちの弟は念覚えたらしそうだな

「あれって念だよね?」

「よくわからないんだ◆彼女念を知らないみたいだし☆」

「嘘ついてるだけじゃないの?」

「ボクが人の嘘見抜けないと思うかい?」

「あー・・・それもそうだね。」

ヒソカって無意味な嘘ばかり並べるからなぁ

まあだから戦闘での賭けも強いんだろう

そのヒソカが見抜けないってことは

嘘じゃないのか

もしくは彼女も嘘をつくのが上手なのか

「あ!盗賊みっけ!!」

それはなさそうだ・・・

なんか無邪気だし

ぽわーってしてるし

体型もぽにゃってしてるし

「ファイアーボール!!」

楽しそうに火の玉ぶつけてる

戦闘狂のヒソカとも仕事として戦う俺とも違う

楽しそうな横顔をぼんやり眺めてると

突然ばっちり目があった

「イルミさん、はやく来ないとお宝独り占めするわよ〜」

「呼ばれてるよ、イルミ☆」

「ヒソカは行かないの?」

「うん、彼女の前では極力戦えないふりをしとくよ。面白いし◆」

何をたくらんでるんだろう

それともただただ

盗賊なんて面白くないものは全部丸投げしよう

なんて考えなんだろうか?

とりあえず楽しそうに念?を使いまくるサリーを追いかけてみることにした

彼女平気で火を使ってるけど山火事とか考えたことないのかな











「おったかっらおったかっら〜♪」

昨日も歌っていたお宝の歌を彼女が歌いながら盗賊のアジトをスキップする

その後ろをイルミがさらにその後ろをボクがついていく

本当に彼女の力は不思議だ

念を練り上げるのがうまいのに体の周りのオーラは一般人より上程度

念の使い手だとこれは無理だろう

それともよっぽどの熟練者で一般人のフリをしてるのかな?

それにしてはイルミのことを知らないし

力もだけど頭の中身も不思議でしかない

もし彼女がまだ念をしらないだけだとしたら

念を知ることになったらどれくらい甘い果実になるんだろう

「ヒソカ、うざい。盛るなよ。」

丁度彼女の後ろを歩くイルミにはボクの邪念が届いちゃったんだろう

ものすごく不愉快そうに言われた

表情は変わらない分イルミは言葉に感情が現れるから☆

といってもそれは数少ない友達とか家族の前だけだろうね

「あ、ここがお宝の部屋じゃない?」

いくつか扉を通り過ぎた先についたのは他の扉となにもかわらない

「よくわからない。ヒソカは?」

「ボクにもなにも、ただ強いやつがいそうだね☆」

盗賊とは違う気配が一つ

扉を隔てた先にいる

それなりに美味しそうだけど

彼女ほどではないかな

サリーに視線を向けると

心配そうな表情をして

「2人はちょっとここで待ってて、私がそいつをやっつけたら呼ぶわね。」

「うん」

「わかったよ☆」

今度はどんな風に暴れるのか楽しみに見守る

「おじゃまー」

律儀に声をかける彼女にイルミが

「へ?」

って間抜けな声を出したのがツボにきて吹き出すと

思い切り肘でお腹を狙われた

「チッやれなかったか。」

殺気が混ざった声

どうやらやる気で肘鉄をしてきたらしい

硬しててよかったよ

ちなみにこのやりとりは3秒間で終わった

「しません!」

「「しません???」」

彼女が思い切り扉を閉めた

「2人ともちょっときて!」

扉から離れたところまで走ったサリーが手招くので

イルミのあとについていく

「この国って大きい生き物いるの?」

「大きい生き物?」

「その、ファンタジーにはつきもののドラゴン様とかヒドラ様とかワイバーン様とか」

「それ全部竜じゃん。」

「希少だけどいるんじゃないかな。結構山奥だからね、ここ◇」

「ふむ」

さっきから思ってたけど

お宝の歌を歌ったりしてるとき

彼女結構性格が変わってる気がする

普段は女性らしいゆったりとした喋り方をするんだけど

幼い喋り方になってる

「そっか、いるんだね〜お宝ほしいのになぁ」

頬を膨らませて扉の先の相手を睨んでるんだろう

まるでおもちゃをとりあげられた子供だ☆

「俺が手伝おうか?」

「ほんとう?」

「うん、今回はただで手伝ってあげるよ。」

おやおや、めずらしい◇

殺し屋がタダ働きだなんて

あ、でもボクも初めての依頼のときはタダにしてくれたっけ?

サリーを顧客にしたいってことかな?

「ありがとう、イルミ!」

「え、うん。呼び捨て?」

「だめだった?」

「いや」

ふるふると首を横に振って首を傾げて考えるように数秒間を置いて

「俺は何をすればいいかな?一回だけだからよく考えてね。追加は料金貰うからね。」

「え、う、うん。」

商売人だねぇ◆

「じゃあね、あのドラゴンと鬼ごっこして」

「え?」

「鬼ごっこ?」

数億ジェニーでしか動かないエリート暗殺一家の長男に

よりにもよって囮を・・・まかせるのかい?

「殺せるのに、いいの?」

「え、そんな危ないことは頼めないよ。」

いやいやいや囮も危ないよ☆

「私が魔術完成させるまで逃げ切ってくれれば大丈夫だからね!」

「わかった。」

ボクだけ蚊帳の外かな・・・
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