ハンター夢出会い〜試験前編

□異世界旅行五日目
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五日目 風邪





















サリーがこの世界にきて五日目

順調だった異世界旅行だが

魔術師も病には勝てないらしく

風邪のため熱と咳、クシャミに苛まれ

布団から出られない状況に陥った

「サリー、大丈夫?」

心配そうに顔を覗き込むのはゾルディック家長男イルミだ

額に乗せているタオルを水につけて冷やすと

しっかりしぼって交換する

近くに置いてあった空になったグラスと薬の瓶を盆にのせる

「ありがと、イルミ」

「どういたしまして、アイツ出しっぱなしなのが問題なんじゃない?」

視線は窓の外で日光浴をしているイフリートに向けられているのだが

寝込んだままのサリーには見えない

「出しっぱなしにしなきゃいけない状況を作ったのは痛いわね。」

好奇心を満たすために召喚をしたのだが

知識不足のため中途半端な存在として召喚をしてしまった故

イフリートを戻すことができないでいるのだ

「まあ昨日お風呂で魔術を使いまくったのが一番よくなかったわ。」

ため息にすら熱がこもるほどの高熱

イルミは眉間に皺を寄せる

念であれば念で消せばいいのだが

彼女の魔術とやらは念の中でも異質な特質系に属するようで

無理やり消した場合、どういうリスクがあるかわからない

そのためにヒソカもイルミもイフリートを無理やり駆除することができない

「おかゆ作ろうか?」

「お願いするわ・・・卵を入れてくれるとすご〜く嬉しい」

「はいはい」

部屋を出てすぐに台所に向かう

「甲斐甲斐しいね★」

「そう?」

「うん、家族みたいにつくしちゃって

とっても面白いよ◆」

「え?」

「めずらしく困惑してる、彼女のことが心配なんだねぇ◇」

トランプ占いをしながら狐目をさらに細くする

意地の悪い笑い方だといつも思うそれが

久々に腹の立つものだと感じた

「そういうヒソカこそ。」

「?」

「薬買ってきてやるなんて優しいね。」

ボンに乗せていた薬の瓶をテーブルに置く

「あ〜・・・」

めずらしくしまったという表情をしたのを

相手の気配を読むのが得意な暗殺者が見逃すわけもなく

「その顔、面白いよ。」

先ほど返された言葉を笑顔つきで送ると

唇を尖らせ視線を逸らすのを見て心の中でガッツポーズをするイルミだった













要望の玉子粥を完成させたイルミは

背後からヒシヒシと感じるイラだった視線に気付かぬふりをしてサリーの部屋に入った

「できたよ。」

「あ、ありがとう・・・」

部屋に入ると熱で潤んだ目に見上げられ

「大丈夫?」

あきらかにさっきよりも悪化しているのを理解し

起きようとするのを手伝ってやる

「ごめんなさい」

「いいよ、病人なんだから」

「ふふ、イルミもヒソカさんも優しいわね。」

「そうでもないよ。」

自分と同時に出たヒソカの名前に若干苛立ちつつ

額から落ちたタオルは桶へ入れ

粥をすくった匙をサリーの口に運ぶ

「あの・・・?」

「食べなよ。弟の看病で作ったことあるから味は大丈夫。」

「そうじゃなくて、自分で食べられるわよ。」

「あ、そっか。あ、こぼれる。」

「あむ」

匙を口に入れたのを見届けてから手を放す

「ん、ありがとね。イルミ」

「どういたしまして」

(少しは甘えればいいのに)

浮かんだ考えがあまりにも自分らしくなく

イルミは自分自身に引いた

そしていま体を支えている体制にも、ものすごく疑問を抱いたのだが

「イルミって料理が上手ね。とっても美味しいわ。」

「風邪で味覚がバカになってるんじゃないの?調味料いれてないよ。」

「味なんかわからないけど優しい味だわ。」

具合が悪い癖に微笑むサリーの言葉に

優しい味ってなんだよバカと言いたいのを堪え

「はやく良くなれよ。」

と軽く睨み付けた

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