ハンター夢出会い〜試験前編

□異世界旅行三日目
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三日目2(盗賊いびりなう)



何かを打ち合わせするとイルミとサリーは2人同時に部屋に飛び込んだ

サリーの視線の先は

洞窟の天井に開いた穴から差し込む光を受け

黄金に輝くコイン、宝石、王冠、剣と多種類の宝物

その傍に横たわる黒い影だ

それは宝の山を抱きかかえるように

まるで子を抱く母犬のように穏やかな雰囲気を発していた

イルミはそれを気にも留めず宝の一つ

金の王冠を指にひっかけた

その瞬間

ゆったりとただただ寝そべっているだけだった

巨体が動き出す

まずは鎌首をもたげただけだったが

人差し指でくるくると王冠をもてあそぶイルミを確認し

金色の瞳、その中央の黒い瞳孔を

爬虫類特有の細いそれをさらに細くし

洞窟すべてを震わせるほど咆哮する

イルミと巨体の鬼ごっこがはじまった

サリーは扉をくぐってからは動かず

瞳を閉じて言葉を紡ぎ出す

「混沌より秩序を見出す者よ」

白い光が円を描くように浮かび上がるその間も巨体は執拗なまでにイルミを追い

壁に天井に大木のように太い尾を打ち付ける

そのたびに石でできた天井から

小さな破片が落ちてくる

「汝の瞳の力用いて

朦朧なる虚偽に囚われし者に鮮明な真実を与え

夢幻より解き放て」

それに動じず言葉を紡ぐ

その足元の魔法陣が一際強い光を放つと

「イルミ!それを天井に向かって投げて!」

吹き抜けになったそこへ金色の王冠が投げられ

巨体の視線がそれに向かった

「ウェールム・プープラ!」

投手の如く全力で投げられたのは

野球ボールと同じサイズの光の球

巨体の口が王冠を受け止めるより速く金色を弾き

そこから雨のように部屋の宝に降り注ぐ

激しい閃光に瞳を閉じ悲鳴を漏らしてその巨体を黄金の中に沈めた

「効いたかな?」

「目くらまし?」

「ううん、なんか幻覚見てるみたいだったからそれを消すのを使ってみたの

あ、怪我とかしてない?」

「全然」

「よかった。」

和やかに話す2人の空気を壊すように

黄金の山が音を立てて散らばり

白い角の生えた頭が飛び出す

2人が身構える、が

すぐにイルミはそれを解いた

「大丈夫みたいだね。」

「わかるの?」

「うん、殺気なくなってる。」

さっきまで大事そうに抱えていた黄金に見向きもせず

竜は黒い羽根を広げて天井から飛び出していった

「なんかあっさりしてるね。」

「宝物に興味なくてよかったね。」

「いっただきー!」

宝物の山へ突撃するサリー

「終わったかい?」

外で待機していたヒソカが

退屈そうに入ってくると

「大量だね★」

黄金にダイブする盗賊いびりの発案者を眺めて笑う

「これだけあれば次の街でご飯食べ放題よ!」

宝の山の中をひとしきり泳いだ後

ヒソカとの盗賊狩りの時と同じく

袋に宝物をぎゅうぎゅうに詰め

肩から背負う

「それを持って山を越えれるのかい?」

「大丈夫よ、本当だったらこれ二つ分は持っていけるもの」

「逞しいねぇ◇」

「あ、サリー」

「なにかしら?」

「さっき俺に追加の依頼出したから口座に振り込んでおいて。」

「え?」

「おやおや★」

「俺は鬼ごっこを依頼されただけだっただろ。

王冠を投げるのは追加依頼にカウントされるんだよ。」

「ケチ!」

「商売だからさ」

「じゃあ、このお宝あげるわよ。」

しぶしぶ差し出した袋

「ダメだよ、振り込んでもらわないと。」

「なんで!?」

本当に意味が分からないという表情でつめよる

「うちの決まりなんだ。あと振込みが1か月経ってもなかったら殺すから。」

「えぇぇ・・・・」

「ご利用は計画的に」

どこぞの金融機関のCMのような言葉の後
唇の隅だけをあげて微笑む?イルミに

サリーは力をなくし

手に持っていた袋を落として中の何かが割れる音を聞いて

悲鳴をあげるのだった




財宝の部屋を出ると

「あ、2人ともちょっと待ってて」

サリーに言われヒソカとイルミは足を止めた

何かと思って振り向くと腰に下げている袋から紙を取り出してはりつける

「我が名において命ず、隔たりとなれ、障礙となれ」

指先が紙に書かれた文字をなぞる
淡い光を放ち、消えた

「失敗?」

「いえ、成功よ。これで簡単には入れないわ。残りは試験が終わったら取りに来なくっちゃ」

ほくほくと効果音がつきそうな笑顔に

ヒソカはあきれつつも幅広い魔術にさらに興味をそそられるのだった

「しっかりしてるね☆」




(ものすごくいい人だと思った私がバカだったんだわ。)

アジトを出る道中

サリーはイルミに頼ったことを激しく後悔していた

ドラゴンとは自分の世界では希少な存在だ

そのためこちらでもなるべく殺したくなかったが故

先ほどは幻覚を解き殺生を避けたのだが

ちょっと物を投げてもらっただけで

人形のように表情のない、慈悲もない男は口座に金を振り込めというのだ

しかも1,000,000ジェニーという

どこのプロ野球選手かと言いたかったが

最初の「追加依頼は料金いるからね」という言葉を忘れていた自分が悪いのだから

怒りは胸の内に押し込めた

口座なんてものあちらにも持っていなかったものだから

コチラではどのように作るのか聞いたところ

イルミが「それも依頼?」

というものだから首を振り

ヒソカは「忘れちゃった★」

と明らかに面倒くさいがためについたであろう嘘に

つっこみを入れる気にもなれないのだ

ならばもう自分でなんとかしなくてはならない

幸いザパン市とやらは海を渡ってすぐだ

そちらで作ることができるかもしれない

と、思い立った

「さっさとザパン市に行くわよ。」

アジトを出るとすぐに2人にそう告げた

「え?」

「別にゆっくりでいいじゃないか★」

「ゆっくり行ってたら1か月経っちゃうでしょ!私イルミに殺されちゃうでしょ!!」

試験のためにすぐに到着しなくてはならないので1か月もかかるわけないのだが切羽詰っている混乱し

奇術師を怒鳴りつけると
拗ねたように唇を尖らせた

「ごめんごめん★」

さして反省もしていない声で謝られ

顔が引きつったのが自分でもわかったが

それを隠す余裕もなくなっていた

袋を背中に移すとイルミとヒソカの襟首をつかみ

「レビテーション!」

浮遊の呪文を使用する

2人が何か言っているがそれを無視

「レイウィング!!」

ありったけの魔力を注いで

ザパン市へと飛んだ
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