ハンター夢出会い〜試験前編

□異世界旅行九日目・十日目
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10日目


















図書館に来たサリーがみたのは

司書らしき女性と仲良さそうに話すイルミだった

あまりの珍しさに目をこすってみたが

どうやら夢でも幻でもないらしい

「不思議なことがあるわね〜」

季節は冬だが

「イルミに春でもきたのかしら」

とおばさんくさいことを呟きながら

お祝いの料理を作ろうと料理本取る

「ボクはこの料理が食べたいな◆」

「っ!!ヒソカさんっ気配消して近づかないでっ」

突然耳元で囁かれる

なんてたまったものではない

大声をあげなかった自分を褒めてやりながらサリーは手に持っていた本をもう一度覗き込んだ

「餃子ね、いいわね〜」

香ばしい香りを思い浮かべながら

我に返って首を振る

「そうじゃないの、今日はイルミにお祝いしてあげないと!」

「お祝い?」

「さっき司書さんと楽しそうに話してたんだもの

きっと恋の季節がきたと思うの。」

「なるほど、女性はそういうの好きだよね。」

うんうんと頷くヒソカ

「でも違うと思うよ?ボクが知ってる限りイルミが愛情を注ぐのは家族だけさ☆」

「そうなの?」

「うん、お見合いはちょくちょくしてるみたいだけどね、

結局うまくいかずに終わってるよ」

「そう」

つまらなそうなサリーを見て

ヒソカは首を傾げる

が、浮かんだ質問は聞かずにしておいた

聞いたところでそれが真面目にかえってこない気がしたからだ

「さ、今日はそろそろ帰ろう。アップルパイ焼くんだろ。」

「そうだったわ、アイスクリームも買って帰りましょう。」

本を棚に戻してサリーが外へ向かう

呼んでもいないのにイルミがそのあとを追うのを見た

それをみて司書が寂しそうにしたので

声をかけた

焼かれたリンゴなど興味もないため

ちょっとした時間つぶしに










「イルミ、焼けたわよ」

二階へ向けて声をあげた

返事はなかった

『出かけたのかしら?』

冷凍庫からアイスクリームを取り出し

扉を閉める

「ねえ」

予想していなかった声に

「ぎゃあっ!!」

色気もない悲鳴をあげて飛び跳ねたあと

恐る恐る振り返る

「ぎゃあ?」

相変わらずに無表情で

小首を傾げるイルミがいた

「びっくりした、居たのね。」

ホッと胸を撫で下ろす

「あァ、ごめん。驚かせたのか」

「できれば気配は消さないでちょうだい。びっくりするから。」

「気を付けるよ。」

(気を付けないと気配出せないの?)

とはツッコまないでいた

どうせ暗殺稼業のことを出されるだろうし

そこからお金の話になったら振り込めませんごめんなさい

という話になってしまいそうだからだ

「アップルパイとアイスは?」

「あ、これよ。」

奮発したアイスを見せる

「それ美味しいよね。いいと思うよ。」

いつも光がないイルミの瞳がキラっと輝いて見え

凝視すると

「なに?」

すぐに元に戻ってしまった

残念に思いながら首を横に振る

「なんでもないわ。」

それよりも今は目の前のアップルパイとアイスクリームを口に入れることを優先した












「ただいま☆」

帰ってきたヒソカが見たのは

半壊したコテージだった

「・・・どういう状況なのかな?」

半分きれいに黒いススだけ残した家を見渡す

「イルミが私のアイス食べたの!」

ふくよかな頬をさらに膨らませたサリーが

怒気を孕んだまま

残った壁の隅でいじけていた

「それで?」

「むかついたからファイアーボールしたの!」

まるで子供の様だ

「なるほどね」

「まあちょうどいいし、試験行こうか。」

「へ?!」

「ごめんごめんそろそろだっていうの忘れてて

受け付けは今日の0時からだからボクもう行くね」

じゃあ、とスタスタ家を出ていく

残されたサリーはポカーンと口をあけて見送った

真っ黒に焦げたイルミがひょっこり顔を出す

「俺も行くから、じゃあね。」

「へ?」

律儀に声をかけたかと思うと

森の中へ消えた

入れ替わりにイフリートが階段から恐る恐る降りてくると

呆然と座り込んだままのサリーをみて首をかしげた。
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