ようさぎの恋
□#005
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すぐジュースを飲み干したあと、銀時の分もジュースを買い、すぐに現場に戻った。
『銀ちゃーん、銀ちゃんの分もジュース買ってきたんだけど・・・・・・』
梯子を登りきった瞬間、先ほどの和気あいあい(はしてないかもしれないが)とした雰囲気はなくなり
張り詰めた冷たい空気に支配されているのを感じた。
屋根の上には銀時と、黒髪の鋭い目つきの男が。
『・・・・・?銀ちゃんの知り合い?』
知り合いじゃなければ、わざわざ屋根の上まで来ないだろう。
しかし、その男が銀時に向ける視線は゛知り合い゛という言葉が似合わなかった。
敵に向けるべき視線。
そんな風に思えた。
「澪耶が万事屋に来る前に、ちょっとな」
『ふーん・・・・なんて人?』
「大串くん」
「ちげぇだろ!!何も知らねぇやつに言ったら信じるからやめろ!」
男は盛大に突っ込んだあと、刀を銀時に投げた。
「近藤さんとは女取り合った仲なんだろ。そんなにいい女なのか?俺にも紹介してくれよ」
『(近藤さん・・・・・・?)』
澪耶はこの男が近藤の知り合いであることを理解した。
だからといって、何故わざわざここまで来たのかが分からない。
「お前、あのゴリラの知り合いかよ?にしてもなんの真似だこりゃ・・・・・・っ!?」ガキィインッ!
銀時が質問し終えるのを待たず、男は斬りかかった。
ぎりぎりでそれを受け止めるが、やはり力が入らなかったのか跳ね飛ばされてしまう。
『!!』
屋根の向こう側まで飛んでいった銀時。
なんとか受け身を取り、大きな怪我はない。
「何しやがんだ、てめぇ!!」
「ゴリラだろうがなぁ、俺たちにとっちゃ大事な大将なんだよ!刀一本で一緒に真選組を作り上げてきた、俺の戦友なんだよ」
『(真選組・・・・近藤さん、真選組だったんだ・・・・)』
色々な星を転々とする澪耶でも、真選組の存在は知っていた。
大将の敵討ち、といったところか。
「誰にも俺たちの真選組は汚させねぇ・・・・この道を遮るものがあるならば、こいつでたたっ斬るのみだ!!!」
男は銀時に斬りかかった。
瓦が大きな音を立て砕け、煙が立つ。
――――――斬られてない
直感的にそう思った。
澪耶の勘は当たり、銀時はいつの間にか刀を避け、後ろから男に蹴りを食らわせる。
しかし男は苦しそうな表情をするどころか、にやりと笑い、宙に浮いたまま銀時の肩を斬る。
さすがにそれは予想できなかったのが、辺りに鮮やかな紅色が散った。
『っ銀ちゃん!銀ちゃん、大丈夫!?』
「別にどうってことねぇよ。それより澪耶、警察呼べ警察」
「俺が警察だ」
「・・・そうだったなァ。世も末だなおい」
『じっとして銀ちゃん、今止血するから』
手ぬぐいを取り出し、傷口に宛てがった。
派手に血は出ているが深くはない。
これならすぐ治りそうだ。
「澪耶、きっといい嫁さんなるぜ」
『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。・・・・・ちょっとお兄さん、どういうつもり?』
澪耶は男に問いかけた。
「お前さんには関係のないこった。女の出る幕はねぇ」ヒュンッ
男の頬を、澪耶が投げた釘が横切った。
ちょうど横切った通りの切り傷ができ、一筋の血が頬を伝う。。
『そんなこと言ったって、あたし友達斬られて黙ってられるほど寛大じゃないの。次はそんな傷じゃ済まないよ』
金槌を持ってにっこりと笑う澪耶。
無駄な闘いは嫌いだが、友人を傷つけられて黙ってはいられない。
「面白ェ・・・・・こいつ斬り終わったら、お前の相手もしてやる。だから待ってろ」
『そう。よろしく』
「とりあえず今はてめぇだ。剣を抜け!!やる気のねぇてめぇ斬ったところで目覚めが悪いんだよ!」
銀時に刀を抜くことを要求した。
確かにまだ刀を抜く素振りは見せていない。
それが男は気に障ったようだった。
「早く抜け!」
すると銀時は無言のまま剣を抜いた。
普段の死んだ魚のような目ではなく、真っ直ぐな瞳。
「いよいよ来るかよ・・・・・・命のやり取りと行こうや!!!」
銀時の方へ駆け出した男。
澪耶を巻き込まないために、銀時は澪耶の身体を軽く押した。
本気の殺し合い。
先日の決闘とは明らかに重さが違う。
澪耶は銀時を庇いそうになる気持ちを抑え、二人を不安げに見つめた。