ようさぎの恋
□#006
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万事屋に、新しい仲間が増えました。
神楽が拾ってきた犬で、名前は定春。
見たこともないくらい巨大で、噛みつく癖があるけど(特に銀ちゃんが被害者)
すごく可愛くて毎日癒されてる。
あと、「スナックお登勢」にもキャサリンという従業員が加わった。
猫耳という武器を全く生かしきれていない。
口も悪いけど、仲良くできたらいいなって思う。
『お登勢さーん、お腹減ったからなんか食べさせて』
日記のような文章が続いたけど、あたしは今、「スナックお登勢」に来ていた。
銀ちゃんはパチンコ、神楽は定春の散歩、新八くんはおつかい。
そのときはたまにこうやって、この店に来てお登勢さんと喋る。
「しょうがないねぇ、そこに座っといで。今何か作ってやるよ」
『うん、ありがと』
ここは万事屋とは違う意味で落ち着く。
あっちが皆でわいわいする楽しい場所だとすると、こっちは静かにゆったりする場所。
「ほらできたよ、お食べ」
『わーい。いただきまーす』
「あんた、ここに来る前は色んな場所転々としてたらしいじゃないのさ。しばらくしたら、また何処かに行っちゃうのかい」
『うーん・・・・・・最初地球に来たのは興味本位でさ、そんなにずっといようとは考えてなかったんだ』
お登勢さんが作ってくれた料理を食べながら話す。
『でも最近、ここにいたいんだ。神楽がいて、銀ちゃんと新八くんがいて、妙もお登勢さんもいて。すごい楽しいの』
「じゃあいればいい。最終的に決めるのはあんただから、私がどうこう言う話じゃないけどね」
『・・・・・・怖いの。いつか皆があたしの前から消えちゃうんじゃないかって』
「なんでそんなこと考えちまうんだい」
『あたし、親に捨てられたんだ』
「・・・・・・」
お父さんも、お母さんも、どんなに待ってと叫んでも振り向いてすらくれなかった。
そのせいか、大切な人ができてもどこかに消えてしまうんじゃないかと怖くて。
だったら大切な人を作らない方がマシ。
あたしが星を転々とするのは無意識にそう思っているからかも。
『皆のことが好き。でも本当に大切に思う前に地球から出て行った方がいいのかな』
「馬鹿だね、誰もあんたの前から消えないよ」
『・・・・・・そうかな』
「むしろあんたが出て行ったら、あいつらは泣くだろうさ。あいつらを信じてやりな、澪耶」
銀ちゃんも
神楽も
新八くんも
妙も
お登勢さんも
皆、消えない―――――――
『ありがとう、お登勢さん』
「あたしゃ何にもしてないよ」
『お登勢さんってお母さんみたい』
「なれるもんならなってやりたかったね、あんたの母親に」
ガラガラッ「おいババア!澪耶のこと連れてってんじゃねぇよ!」
「連れてってねぇよ、馬鹿野郎!」
「澪耶〜!ただいまアル!」
「ケーキ買ってきたんですよ、皆で食べませんか?」
揃って店内に入ってきた三人。
「うるさいよ」と注意するお登勢さん。
確かに騒がしかったけど、あたしにはすごく心地よかった。
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