恋セヨ乙女
□#007
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−入院して一週間が経った頃−
「じゃあ、僕はここら辺で帰るよ」
『今日もお見舞いに来てくれて有り難う』
「いいんだよ、これくらい。それじゃ」
ナツカと滝川はすっかり打ち解けていた。
話はそれなりに合う。
滝川と一緒にいて「楽しい」と思う。
自分の病に対しても理解がある。
本当にこの人となら一緒になってもいいかもしれない。
「よぉ、こんにちはー」
『あ、銀さん』
「たくさん持ってきたぜー、暇潰しの道具」
銀時には「暇潰しの道具を持ってきてほしい」と依頼をしていたのだった。
女性向け雑誌やゲーム機がいくつも並べられる。
『本当に持ってきてくれたんだ』
「まあ万事屋だし?頼まれたら何でもするし?」
得意げに笑う銀時に、くすくすとナツカも笑った。
「あ、それより気になったんだけどよ。さっきこの病室から出ていった男って」
『ああ、滝川さん?この前お見合いをして、その、お付き合いというか・・・』
「マジでか!?」
『本当だよ。結婚してもいいかなとも思ってるし』
「へえ。いいんじゃねえ?優しそうなやつだし」
『でしょ?』
半ば自分に言い聞かせるように頷く。
「・・・・・でもなんか、寂しそうだけどな。お前の表情」
『寂しそう?』
「好きなやつのことを語ってる割に幸せそうじゃねえ」
『そんなことない』
頑なに否定するが、銀時の瞳はナツカを捕らえて離さない。
その目に貫かれると、嘘を吐いていけないような気がした。
『絶対に誰にも言わない?』
「ああ。誰にも言わない」
『私ね、ずっと好きな人がいた。でもその人を想うことが辛くて、疲れて・・・・だから他の人に逃げたの』
「・・・・」
『卑怯だよね。でも、こうするしかなかった』
「卑怯なんかじゃねえ。辛かったんだろ?今まで」
子供をあやすように、銀時は優しくナツカの頭を撫でた。
その手のひらのあたたかさに涙が零れた。
『辛かったっ・・・・・苦しかったよ、銀さん・・・』
「じゃあ逃げたっていいじゃねえか。今まで頑張ったんだ。これからは幸せになれよ」
『うん、うんっ・・・!』
その声は土方によく似ていた。
声だけじゃなく、手のひらの温度や、纏う空気も。
あまりのそっくりさに、思わず笑った。