はりうっどdream
□出て学ぶんだよ
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...なんてね。そりゃそうですよ
あたしは彼の星の数ほどいるファンの中のひとり
告白とかじゃなくて
ファンとして、だよね
そうとらえられて当たり前だよね
今こうしていること自体が奇跡
盗っ人を軽く警察に届けてそれからあたしたちはcafeはいって御茶をすることにした
ハリソンらしい落ち着いた大人の雰囲気が漂うコーヒーパーラーだ
そこで彼はブラックコーヒーを。
あたしはココアを頼んだ
あらためて年の差があることを実感していた
緊張しなくていいなんて言われても目の前にいるのは大スター、ハリソン・フォード。
ずっと逢いたくてその背中を追いかけてアメリカまで来ちゃったくらいにあたしの中での存在が大きかったひと。
むろんガチガチに緊張していた
それでもそれにうち勝とうとあたしはハリソンを思ってせっかく勉強した英語で話し出した。彼もその方がやりやすいみたいでゆっくりと、あたしにもわかるように話し出してくれた
あたしはハリソンのオフを思って
彼の仕事でもある映画の話を持ち出さないようにしていた
のに
「なまえの好きな映画はなんなんだい」
いきなり言い出すハリソンにあたしはびっくりした
彼はエスパーなんだろうか
実はずっと話したかった
自分はこんな人で
どんな映画を見て来て
どんな映画が好きで
いつからハリソンがスキか…
「好きな映画はインディアナ・ジョーンズです」
ハリソンはうれしそうに目を細めてコーヒーをすすった
「僕のファンはだいたいそう言うよね」
低く響くその声が何故か寂し気に聞こえてあたしはつけたした
「ハノーバーストリートも心の旅も大好きですよ」
自分が言ってるのに大好きという言葉にまたあたしの顔は赤く火照り出した。ハリソンがするようにあたしも慌ててココアをすすった。熱くて甘くて舌を火傷した
ハリソンはそんなあたしを見て面白楽しそうににやっと笑った
あたしがずっと見て来た笑顔だ
求めていた笑顔だ。
生だと全然ちがう
もっと格好良くて見惚れてしまう
「うれしいよ。なまえみたいな若い子にあの映画を知ってもらえていて。」
「あたし、ハリソンフォードが大好きなのはもちろんですけど映画もすごい好きなんです」
そうあたしが告げると彼はブラックコーヒーをかちゃんと置いてあたしの目を見て話しだした
あたしはその綺麗な青い目から目をはなせなくなった
「実は今、僕の娘役をひとり探しているんだよ。アジア系の女の子を探していたんだ。君の英語力ならセリフくらいはスラスラ言えると思う。言いたいことわかるかい?」
あたしは突然のこの言葉に心臓をどきどきさせて彼の瞳を見つめたまま横に首を振った
「映画は見て学ぶものじゃない。出て学ぶものなんだよなまえ。」
ハリソンは椅子から立ち上がっていまだに混乱したまんまのあたしに手を差し出した。
あたしは戸惑いながらもその大きな手の上に自分のそれを乗せた
「なまえにもっと映画のこと知ってもらいたい。今から撮影なんだよ。行こうか」
「でもハリソンさん!!」
あたしの手を握ったまま歩きだした彼を声で引き止める
「大丈夫。僕がついてるよ」
そう言ってくれる彼の口元からはコーヒーの苦い香りがして。
あたしはハリソンの手をぱっと放して代わりに彼の左腕に自分のそれを絡めた
「えへへ、奥さん役の方がよかったなあー、だなーんて!!」
そうあたしが彼を見上げて言うとハリソンは一瞬驚いた表情。浮かべてから口を綻ばせてあたしの黒髪をワシャワシャと撫でた
ここは異国の地ロサンゼルス
そびえたつハリウッドの山
あたしの隣にハリソンフォード
彼の腕にはあたしの腕が。
ゆっくり歩きだしたあたしたち
まだまだ先は見えないけれど
これだけは言える
あたし、今までずっとあなたが好きだったようにこれからもずっとあなたが大好きです、ハリソン。
ハリソン。 ね?
→あとがき