ばいおdream
□革のコート
2ページ/3ページ
S.T.A.R.Sのオフィスは今日もせわしなくうるさい。
俺は隠しもせずに眉間にシワをよせた。
見えている、気付いているはずなのに誰もが知らないふりをしてキャーキャーしていた。
とくにクリスとジルの盛り上がりようが半端ではなかった。
「どうする、今夜あたり満開じゃねえのか、あの日本庭園風公園!!!」
「なんだかエキゾチックなのにかわいい花よね、なんだっけ名前・・・」
『サクラ、ですよ』
ふたりが騒いでいるところになまえがやってきてふたりの会話に口を挟んだ。
彼女は日本から派遣されてきた隊員である。
一見細身でただの華奢な女だが射撃の腕は本当に確かだ。
この間は俺の息子の頭の上に乗っていたリンゴをジェイクにはキズをつけずに打ち抜いた。
それもかなり遠くから。
いたずらが過ぎたジェイクをこらしめようとレベッカが冗談で提案したものだが、ケロっとした顔で『できますよ、実践してみせましょうか』などといわれるものだから
ジェイクは恐怖に体を震わせ(しかし強がりなあいつは余裕だぜ、という顔をつくっていた)、他の隊員はドキドキとおとなしくそれを見守っていた。
(内心ワクワクしていた者もいたはずではあるが)
その日から俺はなんだか彼女の外見と腕のそのギャップ...変わりよう...になんだか惹かれて好意を抱くようになってしまった。
俺としたことが。
なまえがクリスと楽しく話しているのをみるとなんだか...嫉妬、という。
そういう感情が芽生えそうでそれにまた怒りそうになった
らしくないな、
そう思って当て付けにクリスにコーヒーを淹れるように頼んだ
が。
『レッドフィールドさんが淹れたコーヒーなんて美味しくないですよ、隊長。私が淹れます』
なんて笑顔で言うもんだから。
「なんだってなまえっ!!!」
ていうクリスのうるさい声もなんだか聞こえたが俺はいつのまにか"頼む"、なんて頷いていた
なまえの淹れたコーヒーはたしかに美味しかった。俺がそう想いこんでいるだけかもしれないが。
そこらへんはよくわからぬな...だがとりあえず、クリスのコーヒーよりは何倍もマシなはずではある
「で、何の話をしている?」
少し機嫌がよくなったところでそのうるさい集団に声をかけた。
機嫌がよくなったのを、悟られないように
『お花見についたの話です』
「・・・はな、み?」
「ウェスカー知らねえのかー??日本ではそういう風習があるんだ!花を見て団子食べたり酒のんだり王様ゲームしたり・・・」
「クリス。あんたは王様ゲームしたいだけでしょ。とりあえず、S.T.A.R.S.のみんなでお酒のんで騒ぐこと、最近してないなあって思って、ふたりで考えてたの。そしたらなまえがお花見なんてどう?って」
『最近近くに、日本庭園風の公園ができて、そこのサクラの木が満開なんです。綺麗ですよ』
綺麗なのはお前のほうだ、なんて一瞬思ったが俺はまた無意識のうちに"おもしろそうだな"なんて返事をしていつのまにやら片口角をクイっとあげて微笑んでいた
しかしサングラスに隠れて目まで微笑んでいることなんてオフィスにいた隊員の誰が想像していただろうか。
『日本にはサクラ、っていうとっても綺麗な花があるんです。隊員みんな含めてですが隊長にもぜひ見て貰いたくて』
そう少し照れていう彼女は日本人らしいといえばらしい、少し赤面を浮かべていた