short novel

□Which do you…?
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―ひらひら舞い散る桜色。

漆黒の中に吸い込まれるように舞い散る花びらは、私の手のひらに触れた瞬間、
音もなく消えた。





―ウツシミ―




ここは、夢の中。
私と同じ名の花は、まるで私を守ってくれるように、寂しくないように、側に居
てくれる。


「…小狼、君」

膝をぎゅっと強く抱えながら、大切な人の名前を呼ぶ。
でも誰も答えてくれるはずもなく、言葉は暗闇に沈んでいった。




同じ名前のあなた『達』

でも貴方は写された存在で、

…それでも、私にとっての『小狼君』は、貴方だけだった。


貴方が微笑むだけで、世界が輝いた気がして。
一番大切な人なのだと、気付いたの。

だから貴方の心を取り戻したくて。

もう一度、笑ってほしかったのに。








戻る羽根。


甦る記憶。



夢見の力。





知った、事実。


『私も、ウツシミ』
つきつけられた事実に、私はただ呆然とした。

その事実は、世界は、私を試すように突き放した。
そんな気がした。









―さくらひらひら、消えてゆく。
まるで私の心のように、揺れながら、暗闇に吸い込まれてゆく。





「…どっち…?」



舞い散る桜の花びらは私の問いに答えるはずもなく、指先をかすめ、漆黒の闇へ
と消えていった。






小狼にとっての『さくら』は、もう一人のさくら。





私にとっての『小狼』は、小狼君。





…貴方にとっての『さくら』は、いったいどっちなのだろう―――





END
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