request novel
□笑顔の先には。
1ページ/4ページ
『あのね!小狼君に見せたいものがあるんだ!』
サクラがそう言ったのは、10分程前のこと。
バスケットを抱え、君の手を握り、俺たちは歩いていた。
―笑顔の先には―
「ここだよ!!」
「…桜?」
たどり着いたのは町外れにある、小さな公園。
空色のブランコや滑り台、緑色の芝生。
そしてその周りを彩る桜。
全てが美しく、そしてどこか懐かしく感じた。
「昨日偶然見つけて…すっごく綺麗だったから、小狼君にも見せたかったんだ///」
「…ありがとう」
サクラの言葉に、自然と感謝の意と笑みが浮かぶ。
そんな俺を見て、サクラは一瞬驚いた顔をした。
「…姫?」
「あっ、ごめんなさい!そうだ!お弁当食べない?」
はい、と答える前に、二人のお腹から響くのは空腹を知らせる音。
二人で顔を見合わせてクスクス笑い、俺たちは近くの芝生に腰を下ろした。
―――
「上手に出来てるといいんだけど…」
「これ、姫が作ったんですか?」
バスケットに入っていたのは、サンドイッチと唐揚げ、玉子焼き、サラダなど色
鮮やかなもの。
これを全て作るには、かなりの時間がかかっただろう。
「俺のために?」
「…うん///」
朝が苦手なサクラには大変だっただろうに。
サクラの気持ちに、愛しさが募る。
気付けば自然と、サクラを抱きしめていた。
「しゃ…おらん君?///」
「…ありがとうございます。嬉しいです」
「よかった…」
そのまま暫く腕の中の温もりを感じ、名残惜しそうに離れる。
ちょっと大胆なことをしたなと思いつつ、箸を手に取った。
「いただきます」
「あ、待って!」
自分で玉子焼きを取ろうとした時サクラに止められ、口の前にそれを差し出された。
いわゆる『あーん』状態だ。
「…ひ、姫!?///」
「…だめ?///」
サクラの上目使いに勝てるはずもなく、俺は顔を真っ赤にして横に振る。
意を決し、小さな声でもう一度いただきますと言うと、俺は玉子焼きを口に含む。
口の中に広がるのは…
「姫…」
「な、なに…?」
「…これ砂糖と塩間違えてません?」
「えっ!?まさか…」
驚いてサクラもその玉子焼きを一口。
その後小声で、しょっぱいと呟いた。
NEXT