short novel

□ばいばい。
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「さくらの羽根がひとつ見つかったんです!」

そう空汰さんに告げると、俺は真っ直ぐさくらの部屋に向かった。そしてさくらに羽根を戻す。
羽根はゆっくりとさくらの中に入ってゆき、さくらの顔色も次第に良くなってきた。

「さくら…目を覚ましてくれ…っ」

俺は祈るように手を握った。

目をつぶると、昔の光景が浮かんでくる。
あれは確か、風邪のさくらのお見舞いに行った時だ。

『手を握って寝たら、起きて1番最初に見るのは、小狼だね。』

その時彼女が言ってたことを思い出す。

―君が起きるのなら、いくらだって握っているから。だから…、だから、目覚めてくれ―




彼女の瞳がすぅっと開く。

「さくら!」

―よかった…よかった!―






「…あなた…だあれ?」









―よかっ…た……?―





『小狼…。あなたの対価は、関係性。』


急に、ナイフでえぐられたような痛みが走る。



『あなたとその子はもう』

あぁ、そうだった…





『元の関係には戻れない』
モウ…モドレナイ…




それが…俺の“対価”…





目から込み上げてくるモノに耐えながら、さくらに状況を説明する。



「知らない人なのに…?」





違うよ、さくら。



知らなくなんかない。



俺と君は幼なじみで、



君は俺の大切な人。





伝えたくてしょうがないんだ。君へのこの気持ちを。



「はい…。姫…。」



そう言って俺は外へと出てゆく。

土砂降りの雨は、空が気をきかせてくれたのかな…?
頬を濡らす水は、雨か涙か分からないから。



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