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□笑顔の先には。
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―――


口に広がった塩味で、なんだかちょっと悲しくなった。
小狼君、最近疲れているみたいだから。
夢でうなされているみたいだから。

せっかくファイさんに、お料理教えて貰ったのに。
せっかくモコちゃんに、小狼君が喜ぶこと教えて貰ったのに。

…笑ってほしかったのに。なのに失敗しちゃうなんて。
ジワリと視界がにじみかけた時瞳に映ったのは、
小狼君が笑いながら、玉子焼きを食べてる姿。

「小狼君、それ失敗しちゃったから…」

「姫がせっかく作ってくれたんだから…全部食べます」

ぽかーんとしてる私の隣で、玉子焼きは次々と小狼君の口に運ばれていく。
少しすると、玉子焼きの黄色はお弁当からいなくなった。

「美味しかったです」

「…ごめんね。失敗しちゃって…。
最近小狼君疲れてるみたいだから、元気になって欲しくて。…笑ってほしくて」

自分が情けなくなってうつ向いた私の頬に、そっと小狼君の手が触れる。
遠慮がちに、でも確かに感じる彼の温度に顔を上げる。
目の前にあるのは、照れたように微笑む小狼君の姿。

「その気持ちだけで、俺は充分嬉しいです」

「…小狼君」

「一緒に食べましょう、姫」

「うん!じゃあ全部食べさせてあげるね!」

「えぇっ!?///」

桜舞い散る中、楽しげな笑い声と、赤く染まった顔。
温かで幸せな空気が、二人を包んでいた。


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