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□笑顔の先には。
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―――


「ごちそうさま!」

「ごちそうさま…でした///」

結局ずっと『あーん』を続けることになり…俺の顔は今にも湯気がでそうなくらい赤くなっている。
その熱を冷ますように、ばふっ、と背中を芝生に預ける。
視界には、青い空が広がった。

「気持ち良いね」

「はい」

サクラも同じように仰向けになり、同じように空の青を眺める。



…昔も、こんなことがあった。
お城の庭で二人手を繋ぎながら話して。

遺跡の話、街の事、異国への憧れ。

…それらはもう、二度と戻らない過去。



「…サクラ姫」

「なに?」

「手、繋いでもいいですか?」

俺の小さなワガママに、サクラは顔を少し染める。
その後返事をする代わりに感じた、左手に温もり。

「…ありがとうございます」

「私も…なんだかこうしたかったの」

そうして暫く二人で陽気に包まれながら寝転んでいると、隣から聞こえるあくびが1つ。
当たり前だ。サクラは今日きっと、かなり頑張って早起きしたのだから。

「姫、寝てもいいですよ。側にいますから」

「うん…ありがとう」

目を擦り、まどろみながら答える。
その翡翠が完全に閉じる前に、サクラはゆっくりと話し始めた。

「前にもね…こんなことがあった気がするの」

「えっ…?」

「前にも、誰かに笑って欲しくて一緒に出かけて…。手を握って…お話して。すっごく幸せだった気がするの」

「…そうですか」

「あれ…誰だったんだろう?いつか思い出せるかな…?」

「………」

「小狼君だったら…いいの…に…」

無意識の願望を紡いだ後、サクラは夢の中へ入っていった。
聞こえるのは規則正しい小さな寝息と、さわさわと髪を揺らす風の音だけ。

起こさないように、でも手は離さないように慎重に身体を起こし、サクラの頬に触れる。



「求めなくて…いいから」



自分達の関係は、もう2度と戻ってこないから。
脳裏を過ぎったのは、ここと同じように桜舞う国。
対価の重さを改めて突き付けられた、満月の夜。



「今は…側にいさせてくれ」

頬に触れていた手を肩に滑らせ、起こさないように、大切に腕の中に収めた。
甘いサクラの香りと、心地よい温もりに、自然と目閉じてくる。



「しゃおらん…くん」

意識を手放す寸前、呼ばれた名前にさらに抱く力を強めて。










―君の笑顔が曇らないよう、願うから。



…俺も、笑うから。
いつも貴女は笑顔でいて



君の笑顔の向く先には。







…願わくば、
俺が映って、いますように。



END
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