short novel
□バレンタイン・パニック☆
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「ハッピーバレンタイ〜ン♪」
小狼とサクラが買い物から戻ってくると、ファイは青い紙袋を二人の前に差し出した。
「これ何ですか?ファイさん?」
「チョコレートだよ〜。さっき作ったんだ。この世界では今日はバレンタインだからね」
「ありがとうございます。いただきます」
そう言ってチョコレートを受け取り、小狼はこの国の歴史書を読むため部屋に戻って行く。
残ったサクラは、じっとチョコレートを見つめていた。
「どうしたの、サクラちゃ…」
「ファイさん!私にもチョコレートの作り方教えて下さい!!」
サクラの赤く染まった顔に微笑みつつ、ファイはエプロンを手渡した。
―バレンタイン・パニック―
「あとはホワイトチョコで名前を書いて…」
「はい!」
チョコ作りも終盤、二人の目の前には4つのチョコレートが並んでいる。
サクラは一つ一つに真剣に名前を書いていった。
「間違えないようにね〜」
「…はい」
「サクラちゃん上手いねぇ〜」
「…はい」
「小狼君のは、本命チョコ?」
「はい…ってファイさん!?///」
「だってサクラちゃん小狼君のチョコの時すっごく緊張してるんだもん〜」
ファイの言葉にサクラは顔を真っ赤にし、不自然に早口になる。
「し、小狼君最近疲れてるから大変そうだなって…悪い夢見てるみたいだし…だ、だから…///」
ファイのからかいに本気で照れるサクラ。
そんなサクラの目の前に差し出された、噂の人物の名前入りチョコレート。
「小狼君、絶対喜ぶよ。早速渡しに行ってきなよ〜」
「はい///!」
大切そうにチョコを持ち、パタパタと階段を上がって行く。
1階に残された3人は、目を細めながら見つめていた。
「小狼とサクラ、ラブラブなの〜!」
「でも本人達がかなり鈍いからねぇ〜」
微笑ましく思いながらも、ふぅ、と同時にため息をつくファイとモコナ。
黒鋼は口元をほんの少しだけ緩ませながら、黙々と剣の手入れをしていた。
「はい黒様!サクラちゃんのチョコレート!ついでに俺のも〜」
「今日は甘いもんばっかだな…」
ソファーの後ろから渡されたサクラのチョコを口に含む。
途端、黒鋼の眉がピクリと動いた。
「…白まんじゅう。お前また酒入れやがったな!」
「さっすが黒鋼♪気付くのはやーい!」
「はやーい!じゃねぇ!変ないたずらしやがって!」
逃げるモコナ、追う黒鋼、傍観するファイ。
2階のことも忘れ、リビングでは激しい鬼ごっこが繰り広げられていた。
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