short novel
□バレンタイン・パニック☆
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「しゃ、小狼君!?///」
突然の状況に、頭がパニックになる。
いつもより温かく感じる、小狼君の温度。
いつもより濃く感じる、小狼君の香り。
いつもより近くて、真っ直ぐな小狼君の瞳。
心臓の音が聞こえそうなくらい、波打ってるのが分かる。
ぎゅっともっと強く抱き締められ、耳元で感じた熱い吐息に、身体の力が抜けそうになった。
「ありがとう…モコナ」
「…モコちゃん?」
今度は私の動きが止まった。
恐る恐る顔を上げると、ほんの数センチの所に、小狼君のアップ。
そしてほのかに香る、ブランデーの匂い。
もしかしなくても…小狼君酔ってる!?
「な、なんでぇ!?私ブランデーなんて入れてないのに!///」
「何騒いでるんだ?モコナ?」
「小狼君〜私はサクラだよ〜!」
どんなに言っても、小狼君は笑ってばかりだった。
…そういえば「酒を飲んだら小僧は変になる!」って、黒鋼さんが言ってたっけ…。
「サクラからのチョコ、届けてくれてありがとう」
そう言って、小狼君は額に唇を落とした。
ぼふん!と湯気が出そうなくらいに一気に赤くなる私の顔。
小狼君…酔ってるとモコちゃんにこんなことするのかぁ…。
ちょっとモコちゃんが羨ましくなっちゃった。
「じゃあ今日はもう一緒に寝ようか、」
「い、一緒に!?///」
戸惑ってる私にお構いなく、小狼君は私を抱えたまま布団に潜り込んだ。
鍛えられた腕の中に、すっぽりと収まる。
「あたたかいな…」
「しゃ、小狼君〜///」
小狼君のこんな近くにいられるなら、抱き締めて貰えるなら、
モコちゃんに間違えられてもちょっといいかな、なんて思っちゃった。
トクン、トクンって響く鼓動を聞くと、少し落ち着いてきた。
「チョコレート…嬉しい?」
「当たり前だよ、サクラからのチョコなんだから」
すぐに答えてくれたことが嬉しくて、ぎゅって小狼君に抱きつく。
いいよね?今だけはモコちゃんなんだし…。
「ありがとう…///」
太陽みたいな優しい香りを感じながら、ゆっくりと目を閉じる。
今日は、小狼君も私も、良い夢を見られる気がした。
「…おやすみなさい」
甘い香りと甘い温もりに包まれて過ごす、そんなあるバレンタインデー。
貴方が大好きだと分かった、そんなバレンタインデー。―――
END