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□嘘かまことか!?カップルコンテスト!
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―舞台袖
すでに参加者が用意をしている。どうやら小狼達が最後のようだ。
メインイベントに相応しく、外には大勢の人の気配がする。
「す、すみませんでした///」
繋いでいた手を離しながら、小狼はいつもより少し早口で言う。
さくらには、何故彼が謝るのか分からなかった。
「なにが?」
「姫、さっきの…嫌だったでしょう?」
さっきの、とは抱きしめたことだろう。
我慢してください、と切なそうに笑う小狼。さくらは両手を握りしめて、彼の方を向く。
「イヤじゃないよ!!」
「えっ…?///」
「わ、私…小狼君に触られるの、イヤじゃないよ?///」
「姫…///」
「小狼君に触るとね…なんか懐かしいっていうか、すごく温かくなるんだよ…?///だから、全然イヤじゃないの」
「姫…」
さくらが小狼の唇の前に、人差し指を出す。
「今日は“さくら”だよ」
「はい」
「敬語もだめ」
「は…うん」
自然と視線が絡み合い、笑みが零れる。
二人の心の中が、ほわっと温かくなった。
『それでは皆さんおまちかねの、カップルコンテスト!ただ今より開催しまーす!』
アナウンスと共に出場者が次々と舞台へ出ていく。
「行こう」
「うん!///」
二人は手を取り合い、一段一段階段を登って行った。
――――
「小狼とさくら、大丈夫かなー?」
「小狼君達なら審査も通ってるでしょー!」
観客席にいるファイ達は、次々に舞台へと出てくるカップルを観察していた。
モコナは黒鋼の頭の上ではしゃいでいる。
「…おい、何企んでんだ?」
「なにがー?」
「相手は別にお前でもよかっただろう」
少し年の差があるものの別にファイとさくらの組み合わせでも違和感はない、と黒鋼は思っていた。逆にファイの方が顔にでない分、上手くやれるだろう。
んー、と少し言葉を選んだ後、ファイは笑いと共にこう言った。
「あの二人ってかなりふんわりしてるでしょ〜?だからキッカケでもないかぎり中々気付かないと思って」
「確かにそうなの!二人とも天然なの!」
「………」
頭の上で跳ねるモコナ。
それを注意せず、黒鋼は黙ってファイの次の言葉を待った。
「確かに、過去はもうないかもしれないけど…、新しい関係は、作っていけるんだから」
「…そうだな」
そんなファイの言葉に、黒鋼も笑みを零す。
「あっ!小狼達だよ!」
「ほんとだ〜小狼君〜さくらちゃーん!ガンバレー!!」
ファイの声援に応える様に、小狼が小さく手を振った。
――――
客席からファイの声が聞こえてきた。
照れながらも、小狼は手を振り返す。
出場カップルは全部で7組。
「頑張ろうね、小狼君!」
「あぁ」
繋いだ手に力を込め微笑み合う。
手から伝わる温もりが心地良い。
『今回は厳選したこの7組のカップルです!皆様の投票でベストカップルを決めます!お題はこれだーー!』
ジャン!
司会者の声と共に、舞台の大画面に文字が映された。
『ズバリ愛の言葉!!さぁお互いに語っていただきましょう!』
『きゃーー!』
やけにハイテンションな司会者に、妙な熱気が漂う会場。照れまくる出場者。
「あははー。これは中途半端はできないねぇ」
「大丈夫かよあいつらは…」
ファイと黒鋼、モコナは少し気の毒そうに小狼達を見ていた。
『大…好き///』
『……///』
順番に愛の告白を述べていく。人前、そしてこの熱気の為か、言葉が止まってしまうカップル続出。
そしていよいよ…
『最後はこのカップル!』
「しゃ、小狼です///」
「さくら…です///」
『この二人は審査で最高得点を出しました☆皆さん大いに期待しましょう!』
『きゃーー☆』
司会者も会場のテンションも最高潮になる。
さらに後ろの大画面に審査時のラブラブ映像が映し出され、視線と期待はかなり集まっている。
小狼はマイクを持ち、さくらの方を向いた。
「……///」
「……///」
二人の間に流れるのは沈黙。段々と会場も静まっていく。
何を言えばいいのか分からなくなってしまった小狼は、助けを求めるように客席へと視線を流す。
すると、真っ直ぐにこちらを見る黒鋼と目があった。
「………」
黒鋼は何も言わずに左胸を拳で叩く。
『正直に言えばいい』とでも言っているように。
小狼はマイクを強く握り、改めてさくらを見る。
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