request novel
□君にとっての、プレゼント
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「そういえば、小狼君も今日が誕生日なんだね!すごい偶然だね!」
「…はい」
小狼君と同じなのがなんだか嬉しくて、
今日は一日中一緒なのが楽しくて、自分の声が弾んでいるのが分かった。
「どんな映画なの??」
「えーっとタイトルは…」
私の問いに小狼君はポケットからチケットを取り出す。琥珀の瞳が、その文字の羅列を追った。
「“誓い〜守ってみせる、愛する君を〜”…ですね」
「な、なんかすごいタイトルだね…///」
「そうですか?」
そう小狼君は平然と言った。ちょっとびっくりしたのと同時に、胸が少し痛くなる。
…誰かのことを、そう想ったことがあるのかな…?
「姫?」
「あっなんでもないの!行こう!」
私は少しムリに笑って、繋いだままの手に力を込める。
そのまま、小狼君を引っ張って映画館に向かった。
――――
「何か飲み物買ってきますね。待ってて下さい」
そう言ってさくらを席に残し、俺は売店へと向かった。
なんだか右手が物足りない。さっきまで、そこに温もりがあったせいだろう。
『今日がお誕生日なんだね!すごい偶然だね!』
…さっきの、さくらの言葉を思い出す。
偶然じゃない、全ては必然なんだ。
だって、さくらが与えてくれたんだから。
喜びを、
愛しさを、
生まれた日を、
生きる、意味を。
「次の方、ご注文をどうぞ」
思考が飛んでいる間に自分に番が回ってきたことに気付く。
メニューを一通り確認した後、
「リンゴジュースとオレンジジュース、アップルパイ二つ下さい」
さくらが好きそうなものを頼んだ。
――――
「姫、お待たせしました」
小狼君は椅子の所にジュースを置きながら、にこっと微笑んでくれた。
それから、朝ご飯の代わりです、と言って、アップルパイを手渡す。
「ありがとう!私これ大好きなの!」
クロウ国にもあったパイ。口に含むと、サクッとした食感と、林檎の甘さが口に広がる。
「それはよかったです」
ほっとした様子で、小狼君も食べ始める。
私はふと浮かんできた疑問を口にしてみた。
「小狼君はどうして私の好きなもの知ってるの?」
小狼君は、サラリとこう言った。
「姫のことですから」
「えっ……///?」
「あっ…///」
顔がみるみる赤くなってくのが分かった。
小狼君も自分の発言に気付いたみたいで、耳が赤くなっている。
もう一口、パイをかじった。さっきより甘く感じるのは、気のせいかな…?
「あっ、は始まるみたいですよ///」
小狼君の声と同時に、場内の電気がふっと消え、スクリーンが現れた。
――――
この映画はどうやらすごい人気のようで。
立ち見の客がいるほど、場内は込んでいた。
映画館の席は隣がすごく近くて、さくらの体温が微かに伝わってくる。
暗い場内。
触れそうで触れない肩。
二人きり。
…やけに緊張してきた。
『大切だから。だから…行きます!』
隣に逸れかかっていた思考は、映画の主人公の決意の言葉で戻される。
俺は、ゆっくりとスクリーンに視線を移した。
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