*Illust*

□*幸福なヒトトキ*
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*高校生小狼×中学生さくらの年の差設定です。
苦手な方はご注意ください〜!!










―――



どうしてこんな状況になったんだ?

今の状況を飲み込めなくて、でもぼんやりとした頭をフル回転させる。
ぽかぽかと暖かい光が降り注ぐ、午後のひと時。小狼は茶色のくせっ毛をがしがしと掻く。

たてた右膝にもたれかかるようにして、さくらはすやすやと寝息をたてていた。





―幸福なヒトトキ―





机の上には、空になったカップと、銀紙が奇麗にたたまれているお皿が2つ。
小さなフォークがお皿の端っこに、行儀よく置かれていた。
今日は始業式。友枝と星条の始業式が重なったため、「一緒にお祝いしよう!」とさくらが小狼のマンションを訪ねたのだ。
「なんのお祝いなんだ」とツッコミながらも流れる、甘く幸福なヒトトキ。
暖かい空気に包まれた空間で「気持ち良いね、寝ちゃいそう」なんて話していたのを覚えている。


「…本当に寝てしまうとは」


はぁとため息をつき視線を落とした先には、いまだ夢の中にいるであろうさくら。
ころころと印象が変わる特徴的な碧の瞳はまぶたに隠れ、薄く開いた唇は、規則正しいリズムを刻んでいた。
さらさらの蜂蜜色の髪を撫でると、判っているのかいないのか、気持ち良さそうに表情を緩め小狼のほうに体を寄せてきた。


「…こんな無防備に眠られても、な」


さっきとは違う意味で、ため息が漏れる。

安心しきった姿で俺に体を預けて熟睡する少女。
短いといつも注意する白のプリーツスカートからは、華奢な足が伸びている。
似合うな、と褒めたショートカットの髪の間から、Yシャツと同じくらい白い首筋が見え隠れする。
不安定な体制を支えようと手を伸ばした肩は、びっくりするほど華奢で細い。

数年前まで自分の周りにあふれていた制服なのに。どうしてだろう?
さくらが着ているとこんなにも新鮮で、こんなにも心が揺れる。











「…やばいな」


今のさくらを間近で見たら、きっと誰もが不埒な考えを思い浮かべるだろう。
それはもちろん、小狼も例外ではない。

やばい。
可愛い。
かなり可愛い。
おそいたい。 


「さくら…」


髪を撫でたい。
腰を引き寄せたい。
キスを、したい―――。


無意識のうちに欲にしたがってさくらに近づいてく自分に気付き、小狼は精一杯の理性で引き返した。

(こんな寝こみを襲うような真似…っ///!!)

さくらを起こさぬよう、心の中でツッコミをいれる。
中学生と高校生。互いの制服が分ける2人の世界は、実際の歳の差以上に小狼を悩ませる。

(まだ中学生だぞ…さくらには早い///!!!)

ふるふると頭を振って不埒な欲望を頭の外に追い払おうとする、モラルある理性。
が、さくらの姿を見るとどうしても近づいてしまう、素直な体。


可愛い。
(大事にしたい。)
キスしたい。
(起こしてしまうかもしれない。)
自分のものにしたい。
(怖がらせたくない。)
まだ、早い。
(もう、待てない。)
まだ、中学生。
(もう、中学生―――。)



「…何してるんだ俺っ!///」


5回ほど、さくらの頭上を行ったり来たりして、衝動と理性の間で葛藤する。
傍から見たら(誰も見ていないが)変な行動をしてるだろうと思い、小狼はさっと顔を赤らめた。

(ちゃんと寝てるよ…な?)

こんな姿、さくらには絶対見せられない。
さくらの安眠を確認しようと視線を落とすと、むにゃ、と小さな唇が動いて言葉を紡いだ。


「ん…しゃお、らんく…」



ぷちん。
愛しい声が囁く名前は、小狼のぐらつく理性を崩すのに十分すぎる破壊力を持っていた。

起きないように、ばれませんように。
自分らしくないことを願いながら、小狼はゆっくりさくらの顔へと、近付いていく。

茶色の髪と、蜂蜜色の髪が、さらりと触れ合った。








―幸福なヒトトキ―
(安らかな眠りから 起こしてしまわぬよう。 せめて頬に その証を――)






『うっ…ん?しゃおらんくん?』
『さっ、ささささささくら!?///』
『いま…何かほっぺに…?』
『べべ別になにもしてないぞっ!!』
『…ほぇ?』





―Fin.―
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