*novel*

□*レンズを覗けば、あなたの笑顔。*
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■レンズを覗けば、あなたの笑顔



今日は友枝中学校の体育祭。
中盤に差し掛かり盛り上がりを見せるグラウンドは、熱気に包まれていた。



「さくらちゃん!」

「あっ!知世ちゃんっ」



体育委員として忙しく動き回るさくらを見つけ、知世は声をかけた。
…もちろん、手にはビデオカメラを持って。

人が良いさくらのことだからきっと人より多くの仕事をこなしているのだろうな、と思った知世は何か手伝おうとした。



「何かお手伝いしますわ」

「そんないいよ!私、体育委員だもん。知世ちゃんはアナウンスの係でしょ?知世ちゃんのほうが忙しいよ」

「でも…次は借り物競争。さくらちゃんが出場なさる競技でしょう?それまでに仕事を片付けなくてはさくらちゃんの勇姿が見られませんわ〜!」



次の競技はさくらが出場する借り物競争。
知世はビデオを撮る気満々で目を輝かせてそう言ったので、さくらは苦笑しながら「じゃあ…」と呟いた。



「じゃあ、一緒に旗運んでくれる?あとちょっとだから…ごめんね?」

「いいえ、喜んでお手伝いしますわ」




二人で運んだおかげで仕事は早く終わり、さくらは次の競技に間に合うことができた。そして言うまでもなく知世はベストポジションを陣取り、ビデオカメラを構えた。…『抜目がない』とはこういうことを言うのだろう。



「では、これから2年女子による借り物競争を始めます。……位置について、よーい……ドン!!」


大きな銃声と共に全員が走りだす。いろんな場所にくくりつけられた紙を開き、借り物を捜すのだが意外と書かれている物が難しく、みんな悪戦苦闘しているようだった。

さくらも一枚紙を取り、開く。
一瞬驚いたように目を見開き、そしてすぐに笑顔になった。何かすぐに浮かんだらしい。



知世は小狼と一緒にビデオを撮りながらさくらを見ていた。


「よかったですわ。さくらちゃん、すぐに借り物が見つかったみたいで」

「そうだな…?」



小狼の言葉はなぜか疑問形。



「どうされました?」

「いや、さくら…こっちに走ってきてないか?」

「え?」



知世が振返り前を見ると、確かにさくらがこちらに向かって走ってきてた。

…レンズの中に零れんばかりの笑顔が見えた。



「知世ちゃん…っ!」


息を切らしながらさくらはやってきた。
そしてまた笑い、


「ついてきてっ!!」


知世の手を取り走りだした。


知世には訳がわからず、ただただ一緒にゴールを目指す。
でも、さくらの後ろ姿がやけに嬉しそうで、よくわからないが知世も笑ってしまった。

そしてそのまま、白いテープを切る。
…1番乗りだ。



「えへへ…1番だね」

「はい」

「私のお題簡単だったから助かったの」

「はい」









「あのね…………」















秋風に乗って、二人の笑顔が紅葉と一緒に舞った。
…体育祭日和、晴れの日の出来事。









「私のお題は、『わたしの1番の友達』だったの。簡単でしょ?そんなの知世ちゃんに決まってるもん」


End
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