*novel*

□*家までのデート*
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「小狼君、一緒に帰ろ?」

「あぁ。帰ろう」


結構暖かく…いや、暑くか…なってきた午後。
いつものようにさくらと帰る。
それは当たり前でいて、とっても幸せなこと。




「でね。その時、山崎君がね…」


大体、喋るのはさくら。
おれはさくらの話に相槌をうつのが専門。
話したくない訳じゃない。
話したい事が一杯あって、どこから話していいか、わからないだけなんだ。
でも、さくらと話していると自然と話したい事が自分から出てくる。
これも一種の魔法なじゃないかと思うぐらい。


「ね、小狼君。今度…一緒にお洋服見てもらいたいん…だ」

「え…?」

「あっ!あのっ!予定とか入ってたらいいのっ!で…でも、小狼君に見てもらいたくて…」


さくらは少し潤みかけた目をおれに向ける。
頬も少し赤い。


「やっぱり…迷惑、だよ…ね…」


多分無意識だろう。
でも…これは反則だろ…。


「いや。大丈夫だ。予定は入ってないし、迷惑じゃない。それに…おれもさくらといたい…し…」


最後の方は消えかけていたが、さくらにはしっかりと伝わったようで、さっきまでの表情とは一転して極上の笑みを浮かべて「ありがとう」と言った。


これも…反則だろ……


「あ!この前、駅の近くに新しくお店がいくつも出来たの!だから行き先はそこにしない?」

「そうだな」

「ふふっ。じゃあ、今度の日曜日」

「大丈夫だ」

「わーいっ!楽しみ!」

「って言っても、おれ、よく分かんないぞ」


おれが苦笑混じりに言うと、さくらは首を横に振った。


「わたしは小狼君と一緒にいられるだけで幸せだもん!」

「なっ…!!」

「それに…小狼君と久しぶりにデート…できる…し…ね!」

「さくら…」


さくらは顔を少し赤らめながら微笑む。
またおれの心臓は心拍数を上げる。


「そうだな…」


最近、色々と家の仕事とかでさくらと休日に会ってなかった。
さくらに寂しい思いをさせていた。


「ごめん…最近…」

「え?」

「会えなくて…」

「わたしは大丈夫。それにね、今気付いたんだけど…」


さくらはそう言うと、おれの手を取る。
そして少し上に上げて言う。


「これも、デート、だよね?」

「へ?」

「下校という名のデート」

「……ぷっ」

「あっ!ひどいっ!」


頬を膨らませておれを睨むさくら。
でもその姿が可愛らしくてよけい笑ってしまう。


いつから、こんなに笑うようになったっけ?


多分、日本に来て、さくらに会ってからだ。
さくらに会ってから、色んな事が変わった。
さくらに会って、気付いた事が沢山ある。
学んだ事も、教えた事も。


本当にさくらに会って良かった…


「ごめん。でも、確かにこれもデートかもな」

「うん!だったらわたし達、毎日デートしてるんだね!しかも一日二回も」

「そうゆう事だな」


にっこりとさくらが笑った。


「じゃあ、明日、朝と夕方、デートだね。公園で待ち合わせ」


気付いたらさくらの家の前まで来ていたようだ。
楽しい時間は本当にあっという間だ。


「あぁ。じゃあ明日、公園で。日曜日にはより本格的なデートだぞ」

「そうだね!本当に楽しみ!それまでは朝と夕方の登下校デートだね」

「あぁ。どちらも楽しみにしてるよ。じゃあ、また明日」

「うん。また明日」


さくらに手を振りながら自分の家へ足を進める。
さくらに会ってもうひとつ、学んだ事。
登下校の時間もさくらがいれば、もっと幸せで大切な時間になるという事。
明日が来るという幸せ。


「さて。明日も遅刻するかな?さくらは…」



END
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