08/01の日記
23:57
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有名新学校の高校から大勢の生徒達が帰宅していく。真新しい制服を着たその一人には、高嶺清麿の姿もあった。その周囲には誰もいない。
特別嫌われているわけでもない。ただ、それほど親しいと言える友人がいないだけなのだ。
自宅から近いその高校には、彼の知っている人物も何人かは進学していた。学年が違うと知り合いはほとんどいないのは確かだが、それでも同じ出身校という生徒はそこそこ多い。
それでも彼に親しいと言える友人がまだいないのは、周囲にいる人たちが無意識のうちに彼を警戒しているからに他ならない。特に他校の生徒は、清麿に対して近寄りがたさを感じていた。
きっかけがあれば、あっというまに埋まるような浅い溝。しかしその溝は依然としてそこには存在していて、その溝が埋まるようなきっかけはまだ起きようとはしていない。
だが一人歩く清麿に、悲壮感は無い。初夏へと移行しようとしている季節の変化を感じながら歩く表情に暗さはない。
雲がゆっくりと流れていく青く澄み渡った空を見上げた瞬間だった。清麿の耳に、聞きなれた声が聞こえたのは。
「きよ……ま、ろ」
聞こえた声は小さくか細い。
「……ガッシュ?」
彼は自分の言ったことに、疑問を感じてはいなかった。彼はただ確信していた。もう会うことのできないはずの友人、だがその声を勘違いする筈がないと。
「そ、に……おるの、か?」
「俺はここだ!」
すれ違った女子生徒が、突然声を上げた清麿を不思議そうに思いながら通り過ぎる。だが清麿からすれば、気にしている場合ではなかった。
「どうしたんだ! どこにいるんだ!」
「清麿、わた、は……」
力ない声は唐突に途切れた。さきほど聞こえた声を反芻する清麿は、強い胸騒ぎを感じていた。嫌なことが起きようとしている、そんな予感が。
もはや声の聞こえなくなった空間では、空だけがどこまでも静かに澄み渡っていた。
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