NARUTO短編集

□精神安定剤
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「止めて・・・・シカマルまで、私の想いを無かった事にしないでよぉ。
私の想いが、今までの私が居なくなっちゃう。」


半ば叫ぶ様にそう吐き捨てると、シカマルは黙った。
どうしてこんな勝手な事を言っている私を怒らないの。叱らないの。放って置かないの。
もう何も分からない。ただ悲しくて、苦しくて。
彼の優しさすらも分からなくなってくる。優しさが憎しみの対象になるなんて思ってもみなかった。


彼だって、そうだ。
優しく、でもはっきりと私を拒絶した。
その優しさが、私を傷付けたとも知らずに。
私を受け入れられないならそれはそれで仕方が無い。
だけど、彼は私に希望を捨てさせなかったのだ。
それがどんなに苦しい事か、彼は知らないのだ。
愛しさが憎しみに変わり、それは更には自愛へと変わり相手を憎む。
全ての諸悪の根源は自分であると言うのに、他人の所為にするなんておかしい話だ。


もういっそ、こんな苦しい思いをするくらいなら死にたい。
自分がこんなに簡単に死にたいと思うなんて、恥ずかしい。
だけど、私まだ子供よ。こんな大きな苦しみ、絶えられない。



「お前の思いが無駄だとかそんな事を言ってんじゃねぇよ。
・・・・アイツの事を否定するわけじゃねぇけど、お前だって分かってんだろ。アイツは、優しくて、でも酷い男だって。
だから早く忘れて次へ行けって言ってんだよ。お前は深く考え込むだろーが。」


私はシカマルを見上げた。
何故、私の事が分かるの。


「こんな時にずりーかも知れねーけど、お前が元気じゃねぇと困る。いい加減気付けよ、バカ女。」



この傷付いた心に、傷口に塩を塗る様な中途半端な優しさは要らない。
だけどこの優しさは、私の、氷の様に閉ざした心を溶かして行った。
水になった私の心は、熱過ぎるその温度に蒸発して行った。




End.
2010.3.28
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