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□フェンス越しに見た鳥瞰図*
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【グレイside】

ナツとグレイは今年初めて同じクラスになったので、2人が知り合ってまだ1ヶ月も満たない。
だがグレイは1年前の入学式の日から、桜色の髪の少年の存在を知っていた。


初めてナツを見たときは、あまりに鮮やかな髪色に目がゆき、顔などはほとんど見なかったのだか、後日改めて見てみると、これがなかなか可愛らしい。

歳のわりには童顔のうえ、きりっとした吊り目だが、笑うときにはその顔を綻ばせて屈託のない笑顔を見せる。
そしてその笑顔を見るとおのずから自分も顔が緩んでしまうくらい、グレイはいつもその笑顔に惹かれていた。


また、ナツはやたらと目立つ髪色ゆえ、すぐに見つけることができた。

窓際の席になった時には、グラウンドで汗を流すナツの姿をちらちらとうかがっていたし、廊下ですれ違う時も、必ずこの桜頭に一瞥を与えるのが常となっていた。

そして時々目が合うと、そんな必要なかろうに、グレイは慌てて目を反らす。


まるで恋する乙女のするようなことをしているなぁと思ったのも事実だが、気になってしまうのだから仕方がない。


そんな生活を飽きることなく1年間続けたのち、偶然にも今年は同じクラスになることができたのだった。

1年間ずっと意識し続けてきたナツと同じクラスになったというだけでもグレイはかなり嬉しかったが、おろうことか、ナツはクラス替えの初日からグレイに話しかけてきた。

「おれ、ナツっていうんだ。おまえって、この学年でロキと争うほどモテるって噂のグレイだろ!?たしかにかっこいいもんなぁ。これからよろしくな!」


ナツの名前なんてとうの昔に知ってる。
俺に寄ってくる女などには興味がないのだが、自分がそれなりにモテるということも知っている。

問題はそこではない。

"たしかにかっこいいもんなぁ"
そんな台詞を、俺の顔をまじまじと見ながら言うナツには、俺は一瞬フリーズした。

もしかしたら単なる社交辞令かもしれないその言葉だが、ナツにその台詞を言われたというだけでもグレイを喜ばせるには十分であった。

それからの毎日も、去年と同様、気づいた時にはナツへと視線を走らせている毎日。
違うのは、今年は同じ教室だということ。


自分でもおかしいと思う。
男のナツに、 こんなにも拘泥してしまう自分が。

綺麗な桜色の髪。
可愛い顔。
明るい性格。

ナツに惹かれる要素などは、挙げるとキリがない。
が、"惹かれる"と一言で言っても、その定義は曖昧だ。

いったい自分はナツのことをどう思っているんだ。

日夜煩悶し続け、毎日ひたすらこの疑問を自分自身に投げかける。
だけれど毎回、喉元まで出かかっているその答えに、自ら気がつかないふりをした。
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