FTnovel

□フェンス越しに見た鳥瞰図*
3ページ/13ページ

そんななか、時々ナツは、昼休みが終わるとともに教室を抜け出して、そのまま5限目の授業をサボることがあるのに気づいた。

当然グレイが気にならないはずがない。

今日もまた、例の如く昼休みの終わりにこっそりと教室を抜け出した桜頭を目で追う。

いつもは気がかりに思うだけに留まっていたグレイだが、今日は思いきってナツの後をこっそりとつけていくことにした。

適当な距離を保ちつつ、人の気配に敏感な
ナツに気づかれないように細心の注意を払う。

ふらふらと覚束ない足取りで歩くナツの後を追いながら、そういえばあいつ、今日は寝不足だとか言ってたなぁなんてことを思い出す。

校舎の北棟へと渡り、普段はあまり使われない教室ばがりが並ぶ4階まで上がる。
そしてその廊下の突き当たりにある階段をナツは登り始めた。


ナツが階段を登りきったとみえたところで、グレイもその階段をゆっくりと上がっていく。
が、そこにはナツの姿はなく行き止まり。かと思いきや、薄暗いその場所を目を凝らして見ると「屋上入口」と記されたさびれたプレート。

なるほど……
ナツがしばしばしば授業をサボっては、屋上へ来ていたのかと納得して、グレイはその扉の取っ手を掴んで回そうとしたが、ふと思う。

いま自分がこの扉の向こうへ行けば、ナツと2人きり…
しかもこのタイミングで行けば、間違いなくグレイが後をつけたということがバレるだろう……

このまま教室に戻ろうか。
それとも意を決して、この取っ手を捻ろうか。

グレイはそんな下らない葛藤を5分間ものあいだ続けていたが、いつまで経っても埒が明かないと、思いきって扉を開けた。


その瞬間、グレイの視界を埋めたのは空の青。それと同時に春の暖かい風が身体へと流れてきて、大袈裟に言うと、グレイはまるで別世界へとループしたような錯覚に陥った。

数瞬の間、グレイは呆然と立ち尽くしていたが、ふと当初の目的を思いだし我に帰る。

辺りを見回すと、屋上の右奥のフェンスの側で、ナツが横になっているのが見えた。

1歩、また1歩。
ゆっくりと側に歩み寄る。

寝ているのだろうか。
全く動く気配がない。

遂にナツの元までやってきたグレイはナツの顔を覗き込み、完全に寝息をたてている様子を確認すると、少しほっとしてその隣に腰を降ろした。


寝るの早ぇ。
てかどんだけ眠たかったんだよ…

ぷにぷにとナツの頬っぺたをつついてみても、全く起きる気配がないナツを見てそう思う。

そこでふと、薄く開かれたナツの口元へと目が行く。
柔らかそうな、可愛い唇。

グレイは唐突に、触れてみたいという衝動に刈られ、何の戸惑いも無く親指でナツの下唇をなぞってみると、案の定ふっくらとした感触が指に伝わった。

さらにその下へと視線を移す。

そこはいつも首に巻いているマフラーが外されて、普段は滅多に見られないナツの首筋が今は惜し気もなく露わになっていた。

そして、ボタンを2つほど外して着崩したシャツから覗くのは、くっきりと浮き出た綺麗な鎖骨。


グレイは思わず、ごくりと唾を飲んだ。

何故だろう。
目の前でただ寝ている同性の友人に対して、興奮を覚えている自分がいる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ