SAO-the after-6year-

□プロローグ
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9月半ばまだ蒸し暑い風が吹く夜の中で、庭に虫が心地よい音色を奏でている。
和人は甚平を着て片手に団扇を持ち、縁側に座りながら月を見上げていた。
「お兄ちゃん何してるの?」
後ろから直葉の声がした。
「…スグ… 別にどうもしてないけど、仕事が忙しくてさ…」
和人の傍らに座る直葉、中学時代の前髪パッツンのヘアスタイルが今ではセミロングになっていた。
風呂上がりのシャンプーの甘い香りと、ボディーソープの爽やかな匂いが和人の鼻をくすぐる。
「そういえば…スグは彼氏出来たのか?」
「何よ急に…いるわけないじゃない!」
「そうか…スグは可愛いからな、いるとは思ったけど」
直葉の頬がピンク色になった。
「あっ!お兄ちゃん風呂入ってよ…冷めちゃうから」
「分かったよ、風呂上がりの後にビールを用意しておいてくれ」
「分かったわ」

バスルームでシャワーを浴びながら、和人はこの間のリビングで両親と話をしていた時の事を思い出していた。
「和人君…実は直葉の事で話があるんだが…」
「直葉が何か…」
「…母さん頼む」
「しょうがないわね…和人君、直葉ちゃんと一緒になれるかな?」
「それって…結婚の事ですか?」
「そう!貴方に他の女性と付き合っていたなら、無理に頼まないけど」
「でも…急に結婚ってわけには」
「分かってるわ…ただ、直葉ちゃんが貴方の事を好きなのは私達が見てたら分かるのよ…」
「分かりました…考えておきます、この事は直葉には」
「分かってるわ…それと病気の方は、分かってるわね」
「はい…」

両手を壁に当てながら、1人呟く和人がいた。
「スグは従妹だぞ…」

バスルームからキッチンに向かう和人に、直葉はビールと唐揚げとポテチを用意していた。
「スグは呑むと酔いながら寝るからな…」
「それ言わないでよ!」
「寝たら運んでやるよ」
「もう…乾杯ー」
「乾杯…」
夕飯を食べる前に一服のビールを呑みながら、夜はふけていった。

直葉は6年前に深い傷を負ったまま3年過ぎていた、彼の裏切りと陰惨なイジメと兄の和人との確執で精神的にかなり深いダメージを受け自殺未遂をした。
だが和人の必死な看病で直葉は立ち直り、高校を中退して大検を受け大学に入学した。
その後のストーリーである。

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