君恋

□君
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「ジャーファル!!ジャーファルはどこですか!?」

あちこちにいる女官にきいてはそこに行くけれどもすでに違う場所に行っていて…の繰り返し。
本日七人目の女官に問う。

「ジャーファルはどこ?」

「ジャーファル様は…えっと、シンドバット様の部屋に先程はいられたばかりでした。」

最新情報をゲット、私は教えてくれた女官に礼をいい、飴をあげて廊下を走った。
ぶっちゃけお兄様にはあいたくないけれど仕方がない。


扉の前につき、まずは深呼吸。
おはよう、おつかれ、がんばって。よし。
私はジャーファルにあう前にこの儀式をやらなきゃ爆発してしまう。

扉を開けたらお兄様とジャーファルが書類とにらめっこしていた。まあお兄様はもうあきた、という様子だったけれど。

やはりジャーファルさんは今日もまともな睡眠をとってないようで、目の下にくまができているし心なしか声のトーンが低い。
それはやっぱりジャーファルが国のために働いた証であり、お兄様がジャーファルをこきつかっている証でもある。

お兄様がしっかり働いて、ジャーファルを休ませてほしい。
というか、私の権限を使って休ませたい。

でもジャーファルは大丈夫です、とかいって政務に励んでしまうから、私は口出しをできる立場でもないしそんなことをしようと出来なくなる。

(幸せそうなかおで、大丈夫ですというのだから。)

考え事をしていると、気付いたらしい馬鹿なお兄様がへにゃりとわらい、手をふってきた。

「ノーレッジ、どうした。」

そしてジャーファルもこっちを向いて、おはようございますと微笑む。

(ああもう心臓が爆発しちゃう!)

「あ、あの、おはようございます、ジャーファルさん。」

自分でも言葉が詰まっているのはわかるが仕方がない。
にこりと微笑でいるジャーファルははい、といった。

「今日も、おつかれ、様、です。あの、」

よかったら、これ。というつもりだったのだが言葉は出なかった。
ジャーファルに手を差し出す。
私が持っているのは手作りの茶菓子だ。
甘いものは勉強、仕事をしているときにいいと聞いたからだ。

ジャーファルはすこし驚いた顔をして、私の作った茶菓子を受け取った。
そのときに、ジャーファルの指と私の指が一瞬、触れた。

「!?」

「これはー」

「あああああ、あの、私はこれで!…が、頑張ってください!」
「あ、あのだなノーレッジ?お兄ちゃんの存在は、無視なの?」

きっと私のかおはまっかなのだろう。
ジャーファルの顔が直視できない。
バタン!と扉をしめ自室に駆け込み、寝台にダイブする。
もふっ、と優しく私を受け止める布団には女官の優しい愛情が感じられてじんときた。
暫く私は布団に顔を埋めて、足をバタバタしたり、してみた。

渡せた。

ジャーファルの驚いた顔が頭から離れなくて。
ジャーファルが受けとる際に触れた指先が熱くて。

(ジャーファルの指は冷たかったのかもしれない)

行き場のない顔の熱を冷ますために窓を開ければ涼しい風が顔にあたるけど、熱は覚めることをしらない。






幸せの余韻に浸ることしばらくすると女官からお兄様から呼ばれているという知らせを聞いていま私は向かっている。

お兄様は女性には手慣れているというのに妹の気持ちは考えないのだから、腹が立つ。

確かにあのときは無視してたけど。意図的に。
仕方がない、私はジャーファルと話すのに精一杯でお兄様なんかにジャーファルとの時間を裂いてなんかられないから。

それになぜお兄様は私をよんでいるのだろう。
お兄様には山のような仕事が残っているはずなのに。
だからジャーファルの睡眠は削られ代わりにストレスと疲労だけが蓄積していくのよ…。

そんなことを沸々と考えながら部屋の前につき、ノックをする。
「お兄様、ノーレッジです。お呼びになりましたようなので来ました。失礼します。」

開けると中には誰も居らずしん…と静まり返っていた。

「お兄様…?かくれんぼは三十路のおじさんがすることじゃないよーおいシンドバットでてきなよシンドバット!」

そろそろイライラしてきた。
なんででてこないのか。気配でいるのはわかるのだが、どこにいるかがわからないし探す気にもなれないのだ。

机のうえにはやはり片付いていない書類が山のように積み上げられ、貴様にそんな余裕はないはずだと言いたくなる。

そろそろ兄といえどシンドバットを殺そうか…。

そんな物騒な事を考えていたらコンコン、と規則正しいジャーファルのノックの音が聞こえた。

「失礼します。」

キィ…と扉がひらきジャーファルと目があう。
そしてジャーファルはにこりと微笑み、綺麗にお辞儀をした。
私もつられてお辞儀をする。
するとジャーファルは慌てたように顔をおあげにくださいといった。

私は姫なんて似合わないし、普通に接してほしいのに。
何回私が訴えても彼はそれを許してはくれなかった。
でも私は諦めないと思ってはいるもののジャーファルには敵わなく。
結局現在も上下関係があるままなのだ。

「ノーレッジ様、ありがとうございました。とても美味にございました。」

「い、あ、いえ、その、甘いものは仕事の時などはいい、と、きいたので、おきに召したようでな、何よりでございますす…」

視線はやはり下にさがっていく。
ジャーファルを見たい気持ち、そして恥ずかしくて目を合わせたくない気持ち、勝ったのは羞恥だった。

その美しい顔立ちは私とは不釣り合いに感じてしまう。

「宜しければ…また」

反射的に彼を見上げるとふふ、とはにかんでいて。
私は即座にはい、と答えた。

目はまるで妹を見ているようだったのだけれど、それでもやっぱりジャーファルは美しいな、なんて。
本人にいったら怒られること間違いなしなんだけどね。






私はまた女官に迷惑をかけることになってしまう。

「茶菓子、一緒につくってくれますか?」

女官は嬉しそうに頷いた。












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