短編GIANTKILLING
□こんき
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もう一度車に乗せられて行き着いた先は、家だった。
表札には堺、と掘られている。
じゃあここ…
「堺の家?」
「ああ。ほら、あがれよ」
「う…うん…」
実を言えば、つきあいは長いけれど堺の家にはいるのは初めてだ。
しかしまぁ、何で急に…。
でも堺の家に入るのってちょっとあこがれてたから、
置いていかれないようについて行った。
「おじゃましまーす」
堺の家は、一人暮らしには十分すぎるほど大きくて、物が少なくて綺麗だった。
おもったとおりすぎて、あー堺の家なんだなって思った。
リビングに入るとテレビがあってその前にテーブルとソファがある。
「お前そこ座ってろ」
「う…うん…」
恐る恐る腰掛けて堺の動きを目で追うと、さっき買い込んだ食材を冷蔵庫にしまって、夕飯の支度をはじめだした。
「あ、あー…手伝…」「座ってろ」
堺は一瞬だけ振り向いてそれはそれは恐ろしい目を私に向けた。
「ハンバーグだったよな」
「え…」
「お前が好きなの」
「そ、そうだよ」
「俺が作るからすわっとけ」
「え…あの…堺」
「なんだよ」
「怒ってるんだよね?」
「あ?…まぁな」
「怒ってるけど私に夕飯作ってくれるわけ?」
「わりぃかよ」
「いや、そうじゃないけどさ…」
なんかそれって…変じゃない?
「なんでかなーって思ってさ…っていうかまずどうして怒ってるのか教えてほしい」
気まずいし、やっぱり無意識のうちに好きな人のこと怒らせちゃってるならそんなのは嫌だ。
堺はしばらく無言で包丁で野菜を切っていた。
とんとん、とんとん。
私の鼓動も同じくらい早かった。
やがてその野菜にキリが付いたのか、堺は包丁を置いて、手を洗いながら
「なら言わせてもらうけどよ」と言った。
「う、うん」
「今日の昼ごろによ」
堺は、手を拭いて私の目まで歩いてきた。