長編短編FE

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 軍に入ってすぐ、私はリベラさんという僧侶の方に面倒を見ていただくようになりました。

リベラさんはエメリナ様を助けるために軍に加わった方だと説明を受けていたので心配しておりましたが、

さすが僧侶とでも言いましょうか…ギャンレル様を心の底から憎むような言動を見ることはありませんでした。

私はそのことについてお聞きしたのですがリベラさんはこうおっしゃいました。



「ええ、確かに少しも憎んでいないと言ったら嘘になるでしょう。

けれど人にはそれぞれの事情がありますから。

ギャンレルがあのようになってしまったことにも何か理由があるのでしょう。

考えられる要因として貧困などがあります。

貧困は本人の意志をも超えた上で人の人生を左右してしまいます。

心優しい人であっても貧困故にすさんでしまうことがあります。

私はそういうことが無くなるように神に願います。

私はとても恵まれていると考えています。

その恵まれた私に、人を憎む資格はないのです」



私には難しくて分からないところもありましたが、

僧侶という者は心が広いのだと知りました。


ですからそれを聞いて私はすぐにリベラさんのことを好きになりました。

この軍で最初に信用できました。


ルフレさんも、私のことを気に掛けてくださいます。

彼女は軍師ですからいつでもたよってね、とおっしゃってくれました。

それはとてもうれしく、ルフレさんの人柄を感じさせる一言でした。


けれど私は結局ルフレさんを頼りにはできませんでした。


だって彼女はギャンレル様を……




みんなは私に同情しようとします。



ギャンレルのところに居ただなんて、大変だったね。




みんなは私を怪しみます。



ギャンレルの手先が復讐をはかっているのではないか。




私はそんなみんなに、体はそうでも心までは近づけない。




 復讐だなんてしません。




こうなってしまったのは仕方のない、やむを得ないことだと私にも分かったからです。



 ギャンレル様のところにいて、大変だったことなんてありません。


殴られたこともあったけれど、そんな事よりもギャンレル様は優しかった。



みんなは暗愚王としてのギャンレル様しかしらないのでしょうね。



暗愚王のギャンレル様は酷いお方だけど、ギャンレル様は不器用ながらも私のことを気に掛けてくださる良い主人なのです。




ああ、会いたい。




会いたいです、ギャンレル様…
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