長編進撃

□第5話
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「レティ!」

「うん?どうしたのライナー」

「何かあったら言えと言っただろう?」

「だから何もないってば」

「なにいってんだお前は。とりあえずこっち来い。
パンも忘れるなよサシャに取られる」



よくわかんないけれどパンを口につっこんで立ち上がるとライナーに外に連れ出された。

食堂は騒がしいから出て行く私たちを気に留める人はいなかった。

だけど出口の近くに座っているジャンの隣を通るときは気まずい気持ちになった。



 外に出ると食堂の熱気から解放されてからだが冷えて冷静になった気がした。

冷静になったら自分がどういう状況なのか分かってきて、ライナーがどうして連れ出してくれたかも分かった。


泣きそうなんだ。私……


「ごめっ……」


エレンもわざわざ食堂から出てきてくれて、申し訳なくなったから涙を我慢した。

ここで泣き出したら二人とも夕飯を食いっぱぐれてしまうじゃないか。


「安心しろよ、パン持ってきたから。なぁライナー」


エレンがまるで私の心を読んだみたいにそういった。


「それより、どうしたんだよお前。
急に泣きそうになって…やっぱジャンに何かされたのか?」


ジャンという名前を聞くだけで涙がもっと溢れてきて、それを見たエレンが慌てて謝ってきた。


「わりぃレティ、泣かせるつもりは…」

「いいの。ジャンは悪くないよ。私が一方的に……」

「事情は分からないが、あまり無理はしない方が良い。
気分が晴れなくてぼーっとしていると立体機動の訓練にも差し支えるからな」

「ありがとうライナー。エレンも。
私今日はもう休むよ。私にとって予想もしなかった事態が起こって混乱しているだけなの」


ライナーとエレンは納得いかなそうに顔を見合わせたけれど、これ以上話すことはできない。



 失恋した。



そんな事でこんなに気落ちしているなんて二人からすればきっとバカらしいもの。


それでもきっと二人は優しいから、話を聞いてくれる。

でも、甘えるわけにはいかない。



「ありがとう、また明日」




   ねぇ、苦しいよ……
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