長編ジャイキリ

□9 走れ
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 本気で走るのは久しぶりだった。

持田が無理をして走るのは相手の選手にも分かるようで、相手選手は緩くぶつかってきた。

持田は舌打ちをしてそれを押し返した。

結局それでファウルを受けたが持田は倒れた相手選手に言った。


「殺す気で来ないと、俺はとめらんないっつぅの。

最後の試合に出る選手の気合いは半端ねぇよマジ」


いつものおぞましい笑みを浮かべてそう言い放つと、もう持田に遠慮をする選手は居なくなった。

三雲のパスを受けて足を伸ばす。

そして飛び上がってボールをキープして走り出す。

たっだそれだけでも体が重い。


それでも持田は笑いながら走った。

最後なんだから、楽しまなくちゃいけない。

ちらちら電光掲示板の時計に目を向ける。

時間は遅いようで早く感じられた。

楽しいのに辛いのがその原因だろうと、持田は思った。


「シロさん!」


前に駆け上がりクロスを出した。

制度を保つために定期的に練習はしていたが、やはり以前のような力強さはない。

だがそれを見越して出したパスだ。

きっちり城西に届いた。

城西は走り込んでヘッドダイビングで押し込もうとした。

だが相手のキーパーがそう簡単に点を入れさせない。阻まれて、ボールはラインを割った。


持田は舌打ちをした。
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