長編ジャイキリ
□9 走れ
1ページ/4ページ
本気で走るのは久しぶりだった。
持田が無理をして走るのは相手の選手にも分かるようで、相手選手は緩くぶつかってきた。
持田は舌打ちをしてそれを押し返した。
結局それでファウルを受けたが持田は倒れた相手選手に言った。
「殺す気で来ないと、俺はとめらんないっつぅの。
最後の試合に出る選手の気合いは半端ねぇよマジ」
いつものおぞましい笑みを浮かべてそう言い放つと、もう持田に遠慮をする選手は居なくなった。
三雲のパスを受けて足を伸ばす。
そして飛び上がってボールをキープして走り出す。
たっだそれだけでも体が重い。
それでも持田は笑いながら走った。
最後なんだから、楽しまなくちゃいけない。
ちらちら電光掲示板の時計に目を向ける。
時間は遅いようで早く感じられた。
楽しいのに辛いのがその原因だろうと、持田は思った。
「シロさん!」
前に駆け上がりクロスを出した。
制度を保つために定期的に練習はしていたが、やはり以前のような力強さはない。
だがそれを見越して出したパスだ。
きっちり城西に届いた。
城西は走り込んでヘッドダイビングで押し込もうとした。
だが相手のキーパーがそう簡単に点を入れさせない。阻まれて、ボールはラインを割った。
持田は舌打ちをした。