短編GIANTKILLING
□大切なもの
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目をこすって、そのまま十分くらい待っていた。
私はその間レオタードの上からジャージを着た。
待っている間中ずーんと沈み込んで空気が重くなってしまって申し訳なかった。
でも、ショックだった。
体操は上手じゃないけど、あれは基本の技だった。
それでこんな事になるなんて。
政志やみんなにも迷惑かけて――
「あ、誰か来たみたい!」
体操部の活動場の第2体育館に誰かの走る音が聞こえてきた。
つんつんしてるシルエットだけでもすぐに誰だか分かった。
政志は首にETUのタオルマフラーを巻いて、グラサンかけたままで、しかもスカルズのTシャツ(ドクロが書いてあります)を着て現れた。
当たり前か、これから試合だったんだし。
だけど友人からの視線が痛かった。
あんた不良と付き合ってたの?とでも言いたげだ。
政志は不良じゃないけどね。
「カヤ!」
走ってきた政志は一番に私の名前を呼んでしゃがんで視線を合わせてくれた。
息が荒くて走ってきてくれたのだとすぐに分かった。
「大丈夫か?」
「少し落ち着いたみたい。肩かしてくれたらなんとか歩けるかも――」
「いやダメだ!」
政志は私が言い終わらないうちにそういって、座り込む私の膝裏を背中に手を回してきた。
う、うそでしょ…!?
「ま、待ってまさっ…わぁあ!」
そのままぐいっと持ち上げられた。
やばい、人生初の姫だっこ…!