長編進撃

□第5話
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bT 喧嘩


 なんだかあれからというもの、ジャンと顔を合わせにくくなってしまった。

私の一方的な気持ちだけどやっぱり悲しい気持ちになってしまう。



 はじめから分かっている、ジャンはミカサが好きなんだって。

それなのに一度理解してしまえば無かったことにはできなくて、この胸の鼓動が病気なんだと騒いだ自分は妙に子供っぽくてバカらしく思えた。



「も…私バカだ……」



私が好きな色は緑。

故郷にあった暖かい草原を思い出させてくれるからだ。

マルコのミサンガを作った後で自分のミサンガ作りに取りかかる。

集中していれば苦しいことは一瞬だけでも忘れることができる。

だけどこの美しい緑色の糸はジャンの瞳を思い出させるだけだ。

途中で作ることを止めて、早く眠りについた。




 翌日の講義でも、あの赤いミサンガはやっぱりジャンのペンケースに付いたままだった。

まぁ数日で無くなっていたらそれもそれでショックだけど、あれを見る度に胸が痛くなるのも考え物だなぁ。



 私はジャンからなるべく離れた席に座った。

そこはライナーの隣の席だった。

ジャンの隣にいたマルコがどうしてこっちにこないのか、と言いたげにこちらを振り返ったけれど

ライナーに「ねぇ、ここ分かる?」と適当な質問をして気がつかないふりをした。


ごめんね、マルコ。


でも私はそっちには行けないよ。

ほら、よく私が座っているジャンの隣に偶然にもミカサが座った。

これでいいんだよ。


だってジャンはその方が幸せだもの――。



「レティ」


不意に、ライナーに名前を呼ばれた。


「聞いているか?」

「あっ…ご、ごめんライナー!」



そうだった!

ライナーに質問を投げかけたのは私なのにほとんど何も聞いてなかった…!


「いや、それよりも気分が優れないのか?ぼーっとしているように見えた」

「う、ううん。ごめんね心配かけて…」

「かまわないが…何かあれば力になるぞ」

「ありがとう!さすがは兄貴、頼りになりますなぁ!」



大げさな身振りでそういった。

空元気だっていうことは兄貴肌のライナーには分かってしまっただろう。

だけどライナーは何も言わずに私の頭に手を置いた。


無性に泣きそうになって、隠すようにうつむいた。
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