長編進撃
□第6話
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bU ケンカ
ライナーの言ったとおり、次の日の立体機動の訓練は最悪だった。
立体機動が一番うまいジャンは何かと手本にされるし、すぐ目の前に急に出てくることもあって考えないようにする、なんて無理な話だった。
結局、いつも以上に体中を枝やら何やらですりむいて教官にもジロリと睨まれ、やる気がないのなら帰れ!なんて言われてしまった。
そんな風に見えちゃったのかなぁ、私…
一日の訓練が終わって落ち込んでいると、エレンが絆創膏を差し出してくれた。
「エレン…絆創膏は貴重だから遠慮するよ」
「でも…大丈夫か?」
「んー…たぶん…」
「そんな気のない返事して、相当疲れ切ってるな。抱き上げて帰ってやろうか?」
「ライナー、殴るよ」
「冗談だ。まだそんなことが言えるくらいの元気はあるみたいだな」
後ろからライナーも来て、笑えない冗談を言った。
二人とも心配してくれるのは嬉しいけれど余計に不甲斐ない気持ちになる。
「二人とも、あんまり気にしないで。すぐ立ち直るから」
「でも…マルコの奴も心配してたぜ?」
「マルコは心配性だし」
そういえばジャンと会わないとマルコとも会わなくなるもので、しばらくあの優しい幼なじみの顔も目にしていない。
「まぁ…とりあえず今日も早めに休めよ」
「うん、大丈夫」
「じゃあ俺たち当番があるから行くな?」
「ん、じゃまた後でね〜」
笑顔を取り繕って二人を見送って、二人が角を曲がって見えなくなるとまたため息をついた。
みんなも寮に帰っていく。
だけど私は一人で座り込んだまま動けなかった。
その中で、一つだけこちらに向かってくる足音があった。
でもたいして興味もわかなかったから地面を見つめたままでいた。
私の上に影が落ちて、足音が止まった。