長編進撃

□最終話
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bW 本音


 私たちはしばらく、無言で肩を並べて座っていた。

たったそれだけなのにどきどきして死にそうだ。何から話せばいいだろう。

とりあえず酷いことを言ってしまったから、それを謝らないと――



「あの――」

「悪かった」

「…え…」

「あんな理不尽な怒りかたしてわるかった」


先に謝ったのはジャンの方だった。

慌てて「私の方こそ…」とかえせば「お前は悪くない」と言われた。


「でも、私はジャンとマルコを…」

「お前が言ったように俺は意気地なしだったんだ。
ミカサのことが好きだって言うアレ。本当は嘘なんだ」

「――!?」


いまいちジャンの言っていることが分からなくて、私は困惑した。

ジャンを見ても気まずそうに視線を泳がせているだけだ。

どうしてそんな嘘をつくのかな。

だってジャンはミカサを見て顔を赤らめたりしていたじゃない。


「なん…で…」

「ミカサは、確かに美人で強い。だけど好きって言うよりあこがれみたいな…
なんつぅか好きだけど恋愛対象じゃねぇんだ」

「ミカサのこと諦める理由付けなの?」

「ちげぇ!俺はミカサより先に、お前が…」

「…何?わかんないよもう…」

「だから――!」


ジャンは泳がせていた視線をしっかり私に向けて、私の肩をつかんだ。

痛いくらいに強い力だ。

顔が近くなって、顔がカァっと暑くなるのを感じた。


「お前が好きだ!」

「……う、うん……?」


え、つまり何…?


「好きなんだ!」

「うっ…うん!?」


曖昧な返事を返して一人困惑状態に陥っているとジャンは深くため息をついた。


「ミカサのことは、お前ともっと話す理由がほしくてそれらしいこと言ったんだ。

本当は、あの日手をさしのべてくれたときからレティのことしか見えてなかった。

俺が意気地なしだから素直にそういえなかっただけだ。

だからお前に避けられたり、エレンと仲良くしてるのを見るのが腹立たしくてあんなこと言っちまった。

すまねぇ」


ぽかーんとしていると、ジャンは私の肩から手を離し、額に手を当ててうなだれた。

いっちまった、などと一人愚痴りながら耳まで赤くしていた。


未だに信じられなかったけれど、嘘を言っているようにも思えなかった。


私は笑った。

ただ笑った。



「ッチ、普通笑うかよそこで…」


ジャンがふてくされたように言った。


「ジャン、ちがうのジャン。バカみたいね」

「はぁ?ぶっ飛ばすぞテメェ!」

「ごめん、だけど…だけど嬉しくて。

だって私もジャンが好きだったから」


今度はジャンがぽかんとしながらこっちをまじまじと見つめていた。


「ジャンが好きだって気がついて、だけどジャンはミカサが好きだから。

辛くなって逃げてたの。

エレンとライナーは元気のない私を心配してくれただけだよ。

私こそ意気地なしだった。ごめんね。好きだよ」



そういったら、ジャンも気が抜けたようにふっと笑った。



「――マジかよ」

「マジだよ」

「じゃあ、レティ。ミカサのことで協力してほしいって言うのはもうやめだ。

これからは恋人としてそばにいてほしい」

「もちろんだよ」

「――っよし、じゃあそうと決まればマルコに礼を言わねぇとだな」



ジャンが立ち上がって、初めてであったときの私みたいに手をさしのべてくれた。



私は愛を込めて、その手を取った。





   ひねくれ者



END
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