短編レジェンズ&FS

□バレンタイン
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「今年は…今年は鷹村君にバレンタインチョコを!」

この冬、私は初めて一人でバレンタインチョコレート作りに挑戦する。

というのも、今年は鷹村君と結ばれて初めてのバレンタインで、だから何かを作ろうと決心したからだ。

私ははっきり言ってどんくさい。

料理も出来ないワケじゃないけどすぐに指を切ったりやけどをしたり、仕舞いにはたまねぎをきりながらそれを理由にしくしくしだす騒ぎだ。

だけど今日だけは失敗するわけにはいかない。

もう家に鷹村君を呼ぶ手配は済んでいる。

だから、もう私に逃げ場は無いのである!

ガンバレ私!大丈夫!出来る!


――だけどにげられない、という状況に自分を追い込んだことは間違いだったようで、必要以上に失敗した私は1度目のマドレーヌを食べられないくらい焦がしてしまった。

大変だ、もう鷹村君が来ちゃう、と半ばパニックに陥り、私はとにかく簡単なものでもとチョコレートをとかす。

 手作りチョコを、鷹村君にこれから毎年あげられるとは限らない。

考えたくはないけれど、もしかしたら別れてしまうかも知れないし、それに今は試合が終わったばかりだからいいけれど減量の時に当たればあげられなくなってしまう。

なのに、私というヤツは…仕舞いにはチョコレートを頭からかぶるという、常人にはあり得ない失態を犯した。

チョコレートめちゃくちゃ熱い。

まぁ、やけどはしなかったけど。

ああ、もう鷹村君来ちゃうよ。

涙出てきたこんにゃろうっ。

インターホンの音がどこか遠くで聞こえる。

あ、鍵開けっ放しだ。

鷹村君も気が付いたみたいで、「あがるぞー?」と声が聞こえてくる。

「おい、鍵は閉めておけ。不用心…ん?」

目が、あった。

あー、せめて涙が止まるのを待たずに着替えて、正直に失敗したのだと告げれば良かった。

鷹村君も驚いたようにこっちを見ている。そうだよね、驚くよね。

彼女の家に行ったら彼女がチョコレートまみれだなんて。

「キサマ…それは私がチョコレートよ、というヤツか!」

「へ…?」

「そうかそうか!なるほどな!」

驚いた顔の次に、鷹村君は上機嫌で笑ってこっちへ来る。

ちょっと、なんていうかその笑みはいささか怪しい気がする。

「今まで、手を出さないでいたがお前も我慢ならなくなったんだな」

「え?え?なに!?なんの話!?」

「照れるな!キサマのその勇気をたたえ俺様がじっくりあじわってやろう!」

「まっ待って早まらないで鷹村く――きゃあああ!!」


 バレンタイン・デー!



後書き
勢いだけで書きました。
すみません^^

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