短編ONEPIECE

□あなたと私の出会いは鉄
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「おっきい…」
 不気味な海賊旗が風に揺れていた。

そこでレティはようやく気がついた。

どうやってその海賊に会えばいいのか。

そのうち降りてくるには違いないが、突然目の前に現れて短剣を突き出しては
闘いを挑んでいるように見えてしまうかもしれない――そう考えた次の瞬間だった。

低く、腹に響く声がかすかにレティの耳に届き、
瞬間、短剣はレティの手の中で暴れ出した。レティはあわてて短剣を両の手でつかんだ。

「まって…連れて行ってあげるから、私もその海賊を見たいのよ!」

レティは短剣に言ったが短剣は止まらない。
そのままレティの体をも持ち上げ、何かに引き寄せられた。
レティはそれでも短剣を放さなかった。

何が起こったかわからなかったが大事な短剣を放すわけにもいかない。
そして短剣に捕まったまま、ぼてっと何かの上に落ちた。

「なんだぁ?頭!女ですぜ。」

ドレッドヘアーの男が目の前で騒いでいる。レティはその海賊船の甲板に落ちたのだ。

引き寄せられる短剣に連れられて。

驚いて短剣を見つめる。
するとレティの上に陰が落ちた。レティは顔を上げて陰を作り出した物体に視線を送る。

そして、目を見開いた。

「あぁ?なんだこいつは。
リペルの力で女が着いてきたことなんていままでにあったかよ?ねぇよな、キラー」
「違いない。」

目の前に立った男は炎の髪をしていた。
額にはゴーグルをしており、逆立った髪が炎に見えたのだ。

そして海の男にしては白い肌に、厚手のコートの下に覗く引き締まったからだ。
肩からかけた黒いホルダーには銃が差し込まれていたがまだ一つ、空きがあった。

赤い瞳が注意深くレティを見据える。

レティは一瞬にしてその男に目を奪われていた。

「おい、何とか言え、女。」
「たっ…短剣…。」
「あ?それか。」

男はしゃがみ込んでレティの瞳をのぞき込んでからその手に握られていた短剣を取り上げて鞘から抜いて見つめた。
それから口端をつり上げていった。

「……!良い短剣じゃねぇか。
俺は今までにこんなにいい剣を見たことはねぇ。
どこで手に入れた。言え。
そうすりゃあ命くらいは見逃してやるぜ。」

「わ、私が作った…の…。」

レティは緊張でうまく動かない口を必死になって動かしていった。
一行は驚いたように目を見開き、ざわめいた。
そんな中赤髪の男だけが何も言わず、ただただ、レティの瞳を見つめていた。
そしてほかの連中が静まった頃、盛大に笑い出した。

「どうやらウソじゃあねぇようだな。
女、名前は?」

「レティです。剣を作って暮らしています。
それは…私の最高傑作です。
私の夢は、その短剣をすばらしい海賊に使ってもらうことです。」

「そうか、俺の名はユースタス”キャプテン”キッド。きいたことくれぇはあるだろう。
お前は何で俺の船の近くにいた。」

「剣がうずめいていたんです。
だからきっと海に、この剣の主になる方がいるのではないかと思ってやってきました。
ユースタス・キッド…ルーキーですよね?」

尋ねれば、キッドは「ああ」と答えた。レティはうれしくなって笑った。
やっと。やっと見つかった。この短剣の主が。

「海賊に会って笑うたぁ、おもしれぇ奴だ。おまえ、材料さえあれば剣が作れるのか?」
「道具と材料さえあれば。」

「そうか、じゃあお前、俺の船に乗るか?」

その一言に後ろのクルー達は言葉を失った。

それほどの逸材がいれば連れて行くのがキッドだ。
だがキッドは「俺の船に乗るか?」と尋ねた。
それに驚いたのだ。
普段のキッドならば「俺の船に乗れ。」というに決まっているのに。

そして少女は驚くべき事に笑顔でうなずいていた。

「決まりだな。」

キッドはにやりと笑い、開いていたホルダーの一つにその短剣を丁寧に仕舞った。

それからレティに、手をさしのべた。
甲板に座り込んでいたレティは、しずかにその手を取った。



  ――私とあなたの出会いは鉄――



(キッド、まさかとは思うがおまえ、あの少女に惚れ――)
(その先言ったら海に落とすぞキラー)
(俺はお前とちがって泳げる。)
(ぐ…違いない…。)
(…;)


後書き
ここまで三作一年前に挙げた物です。
これから挙げていけるように頑張ります!
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